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福島原発事故で自ら被災者となった女性映画監督が自らの妊娠、出産を描いたドキュメンタリー今春上映

福島原発事故から間もなく5年。事故直後、取材をしていた映画監督の海南友子(かなともこ)さんが、現場の福島で自らの妊娠に気づいてから、出産までを描いたセルフドキュメンタリー「抱く{HUG}」(ハグ)の試写会が都内で行われた。

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福島原発事故取材中に知った自らの妊娠。今春、公開される「抱く(HUG)」は、原発事故の取材、京都への避難、出産まで、自らの体験を撮ったセルフドキュメンタリーだ。

不妊治療を続け、諦めかけていた中で突然、知った自らの妊娠。うれしい気持ちの一方で、高い放射線の中で取材を続けたことへの後悔、そして、福島で出会った母たちの苦しみが自分のことになった瞬間だった。原発事故により突然、ごく当たり前だった日々の暮らしがすべてが変わってしまった。

取材を続けるべきか、迷い、苦しんだ末、「なにもかも変わってしまった世界」で、母となる意味を記録するため、カメラを回し続けることを決意する。自らも被災者となった体験に、被災地から避難した母親たちへのインタビュー、津波の被害を受けた街などの取材を加え、完成した作品が今春、全国で公開される。

(さらに…)

電気の自由化は名ばかり?原発費用は電気料金に上乗せで国民負担?<地球環境問題 原発の行方>

“原発特別扱い”

2016年から家庭向け電力が自由化され、消費者は自由に売り手を選べるようになり、電気料金の値下がりが期待されている。ところが、密かに再稼働、新設などを含め原発にかかる費用を電気料金に上乗せしようという計画が進められているという。

原発費用は国民負担

政府と電力会社が独占的に決めてきた電気料金は、2016年以降、自由化されることが決まっているが、密かに“原発の特別扱い”が進んでいるという。東京新聞は9月3日の社説で経済産業省の有識者の間で密かに交わされている話として紹介した。

自由化で電気の値下げが期待されているが、期待はずれに終わるかもしれない。

自由化で電気の値下げが期待されているが、期待はずれに終わるかもしれない。

その話とは電気の市場価格が基準価格を下回った場合、「原発の新規建設、廃炉、維持にかかわる費用を、全消費者の電気料金に差額分を上乗せする」というもの。従来通り、電気料金は政府と電力会社で決め、原発を動かす大手電力会社に損がないようにするという。つまり原発ありき、電気の自由化とは名ばかりということなのだ。

これまで「安い電源」とされてきた原発だが、ひとたび事故が起これば、巨額の賠償費用が必要になる。自由競争に耐えられないほどコストは高く、「独占事業の中でなければ原発事業が成り立たないことを、国も認めているということ」と記事は指摘する。

避難計画があっても避難できない

原子力規制委員会の安全審査を通った原発は「再稼働」を進めていくという方針のもと、その先陣を切って10日、九州電力川内(せんだい)原発が新規制基準に適合しているとの判断が出て、年末に再稼働する予定で進んでいる。その一方で原発事故に備え、国は自治体に避難計画を作るよう指示しているが、川内原発の周辺自治体では未完成という。安全審査には「避難計画」は含まれていないそうだが、国民の命はおかまいなし、というようにも見える。

パニックも想定される緊急時に計画通りにいくのか?

地方は幹線道路が限られている。パニックも想定される緊急時に計画通りにいくのか?

その一方、NHKが原発30キロ圏内の全国の自治体にアンケートをとったところ、半数以上の自治体が「避難計画の作成を終えた」と回答したというが、未完成という自治体も少なくない。

今年4月に青森県の原発の建設計画凍結を求めて提訴した対岸の北海道・函館市の市長がテレビのインタビューで「事故が起きれば、避難は難しい」と語っていた。また、全国自治体の首長で構成する「脱原発を目指す首長会議」でも避難計画の実効性を疑問視する声が上がっていた。

福島原発事故が起きたときも、道路が渋滞し、長い車の列ができた。限られた道路しかない地方では、何万人もの人の一斉避難は困難を極めるだろう。半数以上の自治体が作り終えたという避難計画の実効性はいかなるものなのだろうか。

必ず起きる自然災害

政府は原発を重要なベース電源として位置付け、原発再稼働、さらに新設も進めようとしている。その理由に挙げるのが、安定かつ安い電源とされること、そして、「CO2を出さず、化石燃料の依存も減らせる」という地球環境問題、温暖化の対策という点だ。

原発が安い電源ではないことは共通認識になりつつあるが、日本はプレートが複数入り込む世界的にも珍しい地形で、無数の活断層もある。東京では30年以内に70%以上の確立で大地震が起きると言われ、西日本では南海トラフ地震も心配されている。世界でも地震大国である日本。そんな危険性の高いところで、原発事故が起きれば取り返しがつかない事態になる可能性が高い。

そして、使用済み核燃料の処分方法も依然、見通しはつかない。今も福島原発周辺は放射能に汚染され立ち入ることができないことを考えれば、地球環境問題、温暖化対策という説明も苦しく、国民の理解も得にくいのではないか。

東京電力・福島第一原発の故吉田昌郎所長は事故4日目に「東日本壊滅を覚悟した瞬間があった」と語っていたという。何がなんでも原発再稼働するという姿勢は、福島の事故のことはすっかり忘れてしまっているかのようだ。

福島原発事故でスピーディーの情報がありながら、国民には知らされず、拡散する方向に多くの人が避難した。原発事故が起きたとき、福島以上の被害が出る可能性は十分ある。誰も責任をとらない無責任体制であるならば本当に怖いことだ。

 

デング熱、ゲリラ豪雨など頻発する環境異変。見えないウイルス、異常気象…予測不能な未来が迫る<地球環境問題 脅威として姿を現す温暖化>

デング熱、異常気象…温暖化の進行を危ぶむ声続々

国内で70年ぶりの感染者が確認されたデング熱。日を追うごとに、感染者は増え続けている。感染場所とされる東京・代々木公園は9月4日、駆除後もウイルスを持つ蚊が確認され、ついに開園以来、初めて立ち入り禁止にされる事態になった。一方、広島市北部では大規模な土石流が発生するなど、近年、以前は見られなかった感染症や自然災害が頻繁に起きるようになっている。相次ぐ感染症の増加や、異常気象などの“環境異変”は、温暖化、地球環境問題の影響との見方がある。

温暖化でウイルス、媒介生物の活動範囲が拡大

70年ぶりのウイルス出現、異常気象など近年相次ぐ“環境異変”。気象庁は8月の大雨について「記録的で異常気象といえるほど珍しい。温暖化の影響もある」との見解を示した。年を追うごとに自然災害は深刻化し、温暖化の影響は目に見える形で現われ始めている。

ヒトスジシマカの分布北限の移動(国立感染症研究所)

ヒトスジシマカの分布北限の移動(国立感染症研究所)

デング熱を媒介する蚊として一躍有名になったヒトスジシマカ。国立感染症研究所によると、1950年の分布の北限は栃木県で東北には生息していなかったが、2000年に山形県で、2010年には青森県でも確認されるようになった。

この他、世界でもエボラ出血熱などの感染症が広がりを見せている。デング熱は人から人への感染はないというが、感染症の広がりは大きな脅威になる。その原因は、ヒトやモノの移動が昔に比べ格段に増えたこと、また、アフリカや東南アジアで森林開発により、もともとウイルスを持っていた野生動物との接触の機会が増えたことなど諸説ある。

中でも脅威なのが、動物などを介して出現する強力な感染症だ。西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱は未だに収束に向かう気配はない。世界へ人が容易に移動できる今、ウイルスがまたたく間に世界に広がる可能性は高い。温暖化により、これまで日本には生息していなかった動物やウイルスの生息範囲が広がっていくことが考えられ、これまでなかった感染症が発生するリスクも高まっている。

スーパー台風、ゲリラ豪雨など異常気象も続発

一方、70人以上の犠牲者を出した広島県の大規模土石流は、短時間に降った大量の雨で地盤が緩んだことによるものだった。一気に濁流が樹木をなぎ倒し、家屋を飲み込み、車が水に浮かぶ光景は、改めて自然の破壊力のすさまじさを見せつけた。

スーパー台風は、世界各地で深刻な被害をもたらしている。

スーパー台風は、世界各地で深刻な被害をもたらしている。

2005年にアメリカで大きな被害をもたらしたハリケーン・カトリーナ以降、世界で甚大な被害をもたらす規模の台風「スーパー台風」が世界各地で甚大な被害をもたらしている。2013年11月、フィリピンを直撃し、1200人以上の死者が出た台風は最大風速が毎秒87.5mに達する「スーパー台風」だった。これは車も風で吹き飛ばす強さというから、もし国内であれば壊滅的な被害をもらすことは想像に難くない。こうした異常気象の原因も温暖化と見られている。

台風を動かすエネルギーは、海面から発生する水蒸気の量が影響する。そのため、水蒸気が豊富な熱帯地方が台風の発生場所になるが、温暖化で海表面の温度が上昇することで強い台風が生まれると言われる。地球環境問題に有効な対策を打たず、温暖化が進めば今後、さらに強い台風が生まれることが予想される。しかし、台風の数も増えるのかというとそうでもないらしい。「地球全体で台風をつくるのに使えるエネルギーが変わらないとすれば、強い台風が増え全体の数は減る」という識者もいる。台風の数は減り、さらに強さを増していくことが予想され、深刻な被害をもたらす土砂災害は今後も全国各地で起きることが心配される。

気温の上昇で農作物の転作も進む

温暖化は農作物にも深刻な問題。各地で転作の取り組みが進んでいる。

温暖化は農作物にも深刻な問題。各地で転作の取り組みが進んでいる。

温暖化の進行が深刻化する一方で、気温が高くなったことで、農作物の転作を進める農家が全国各地で増えている。

リンゴの生産が盛んな青森県では、これまで見られなかった病気が発生したり、高い温度の影響で日焼けや色づきの悪さなど、栽培環境が悪化している。こうした中でモモへの転作が進み、栽培面積は10年前と比較して、モモは1割ほど増え逆にリンゴは1割ほど減った。ミカンの産地・愛媛でもミカンから地中海原産のブラッドオレンジに転作する農家が増加。コメは将来の温暖化しても栽培できるよう、各地の気候条件に併せて品種改良を進めているという。

1997年、日本は温室効果ガス削減の数値目標を定めた京都議定書を採択したものの、2013年以降は離脱。一方、国際舞台でも先進国、発展途上国の対立は続き、温暖化に対して数値目標の設定などで合意は得られていない。温暖化、地球環境問題は日増しに深刻化し、目に見える形の脅威として私たちの目の前に姿を現わしている。

政府は土石流の対策として、全国の危険個所に土石流を堰止める効果があると言われる砂防ダムの建設計画を進めているというが、効果は限定的という見方もある。人類の生存に脅威になっている温暖化、地球環境問題に対して場当たり的な対策で良いのか、抜本的な対策がのぞまれる。

 

地球環境問題、社会問題を歌う異色のアイドルグループ・制服向上委員会。結成22年目。ライブ、ボランティアを中心に活動

脱原発・いじめなどテーマは様々。新曲は「金目でしょっ!」

脱原発、地球環境問題をはじめ、憲法9条、いじめ、歩行喫煙など社会問題をテーマにした曲を多く歌い、全国各地でボランティアやライブ活動をしている異色のアイドルグループ・制服向上委員会(アイドルジャパンレコード)。福島原発事故後の2011年9月には、CDシングル「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を発表し話題を集めた。

アイドルだから、言いにくいことも言える

現在、9代目のメンバーは10人で活動中。今秋、新しいメンバーも加わる予定。

現在、9代目のメンバーは10人で活動中。今秋、新しいメンバーも加わる予定。

制服向上委員会は1992年結成で、22年目という長寿アイドルグループ。現在の10名のメンバーは9代目。結成当時はCDが売れなくなり始めたころで、冬の時代でもあった。「10人の人から年間1万円をいただけるアイドルにしようという思いで始めました」とアイドルジャパンレコード代表の高橋廣行さんは言う。

ある脱原発イベントに参加した際には、数十人の機動隊に取り囲まれたこともあったという。悪いことをしたのかだろうと不安になる時もあるし、怖い思いもする。そして、大手スポンサーの支持を受けづらく商業的にマイナス面が多いにもかかわらず、難しいテーマの曲を歌い続けるのはなぜか。

「日本では珍しいと言われますが、イギリスなど海外ではアーティストがこうした曲を歌うのは一般的です。間違っていることに対しては、きちんと『おかしい』と言っていかなければならないけれど、言いにくいこともある。その点、アイドルは歌や踊りが下手でも、転んでも、間違っても許されますし、お客さんも寛容なんです。ファンの中には『原発賛成』という人もいるんですよ」と高橋さんは笑う。

「国内には現在、1000ほどのアイドルグループがあるとも言われますが、イベントによっては訪れるお客さんよりもアイドルの人数が多いこともある。2曲歌って握手して終わりで、誰も歌なんて聞いていないんです。また、ボランティアという場合でも普通は一度きりということが多いですね。でも、制服向上委員会の場合は同じ老人ホームや障害者施設に何度でも行きます。『また、来てくれたんだね』と喜ばれ、メンバーもやりがいを感じています」。

根強いファンは40代、50代の中高年男性

制服向上委員会のライブ。訪れた中高年のファンたちは大きな声援を送っていた。

制服向上委員会のライブ。訪れた中高年男性のファンたちは大きな声援を送っていた。

ライブがあるとのこと、訪れてみた。ふだん多くの人でにぎわう東京・上野だが、お盆休み最終の日曜ということもあって、制服向上委員会のライブが行われたこの日は街を行き交う人影もまばら。狭い路地を入った地下の小さなライブハウスは40代、50代以上と思われる中高年の男性たちでいっぱいだった。

ライブが始まると、ファンが曲の途中で入れる合いの手、野太い男性グループの掛け声が会場にとどろき盛り上がる。1970年代から1980年代にかけてアイドルブームが起きたが、その応援方法や掛け声は、当時を彷彿とさせる。

制服向上委員会が歌う曲は、地球環境問題やいじめなど社会問題を取り上げたものの他、恋愛をテーマにしたものも多い。一方で爽やかな歌やダンスのステージと、声援を送る中高年男性たちの間にある“不思議な間”。

聞くとかつてのアイドル全盛の時代から『アイドル好き』を自任する人、メンバーたちを自分の娘のようにように思っている人、有名なグループは手が届かない存在だけど身近に感じられるから…など、ライブに来る目的はそれぞれのようだ。人気グループでは、自分が好きなアイドルを応援するため、一人で何枚もCDを購入しその支出は一人数万円に及ぶ人も。それだけに、アイドル市場は経済力を持った中高年が市場を支えているとも言われる。

これからも地球環境問題、社会問題を訴え続けていく

「歌える場所があればどこへでも」がモットー。イベントやボランティアに積極的に参加している。

「歌える場所があればどこへでも」がモットー。イベントやボランティアに積極的に参加している。

この日のライブでは、新曲「金目でしょっ!」など3時間にわたって熱唱。「金目でしょっ!」は石原伸晃環境相の福島での発言をヒントに曲にしたもので、「日本全国、金目でしょ~♪」とユーモラスに今の日本、政治を皮肉る。近くYouTubeにアップする予定という。10月1日に発売される41枚目、結成22年記念アルバムとなる「ルールとマナーを守ろうよ!」にも収録される。

ライブの途中や終了時に設けられる写真タイムでは、お気に入りのアイドルと記念撮影ができる。写真に収まった男性たちが満面の笑みで、幸せそうな表情を浮かべていたのが印象的だった。

ライブが終わって、会場を出ればすぐに再び現実の世界に戻され、明日からは普段通りの毎日が始まる。街の喧騒の中で道すがら男性たちは、次にライブに参加する日が来るを楽しみに、明日からもまたがんばろうと思うのかもしれない。地球環境問題とアイドル、そしてファン。接点はないようであるのだった。(ライター 橋本滋)

 

 

青森・大間原発の炉心から300メートルの民家・あさこはうす 母の代から反原発貫いて30年<自然の大切さを次世代に伝える>

反原発、地球環境問題を訴え続ける

津軽海峡に面する青森県・下北半島の北端で、建設中の大間原子力発電所(大間原発)の炉心からわずか300メートルにある唯一の民家があさこはうす(青森県下北郡大間町)。過去には地権者があさこはうすを含めた建設予定地の買収を拒んだことで、大間原発は建設地を移動せざる得なくなったこともある。母の代から30年、用地買収に応じなかったのは、「自然を壊したくない、失いたくない」という反原発、地球環境問題への想いだ。

推進側からは「2年待てば、大間は動く」との声も

建設中の大間原発から30キロ圏内に含まれる北海道・函館市は今年4月、建設凍結を求めて提訴した。

建設中の大間原発から30キロ圏内に含まれる北海道・函館市は今年4月、建設凍結を求めて提訴した。(函館市ホームページより)

大間のマグロで知られる青森県の大間町は、人口6000人で漁業が主産業の小さな街だ。その一方で、国からの交付金で公共施設、病院などが建設され、流れ込んだ原発マネーは400億円以上とも言われ、住民の一割が原発関連の仕事に従事する原発城下町でもある。

原発の使用済み核燃料を再処理することでできるのが「プルトニウム」。本は4000発の核爆弾を製造できるだけのプルトニウムを備蓄するプルトニウム超大国とも言われる。大間原発は2008年5月、そのプルトニウムを再び原子炉で利用するプルサーマル計画の一部として着工。プルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を100%使う「フルMOX原発」である。MOX燃料は放射線量が高く毒性が強い上、敷地内、及び周辺には活断層の存在が指摘される大間原発は、“国内有数の危険度が高い原発”で、事故が起きたときの被害の大きさは福島原発事故の比ではないとも言われる。

福島第一原発の事故などを契機にいったん、中断されていたが前政権下で工事が再開。この決定に対し30キロ圏内に一部が含まれる対岸の北海道・函館市は猛反発し、今年4月、Jパワー(電源開発・東京都中央区)と国を相手取り、建設差し止めと、原子炉設置許可の無効確認を求める訴えを起こした。

1984年の大間原発建設決議以来、原発容認という空気が街全体を包む中、小笠原厚子さんの母・熊谷あさ子さんは、提示された巨額の用地買収にも首を縦に振ることなく2006年、68歳で逝去。大間原発阻止の遺志は、娘の小笠原厚子さんにより引き継がれている。

原発と地球環境問題の解決は相反

熊谷あさ子さんと小笠原さんが建設したログハウスの「あさこはうす」は、大間原発の炉心からわずか300メートルの位置にある唯一の民家だ。国道からあさこはうすまでの道路はJパワーから提供されており、フェンス、鉄条網で仕切られた道を15分ほど歩くと到着する。家主である小笠原さんの自宅は、北海道の北斗市にあるが、使用されていないと道路が閉鎖される可能性もあるため、定期的に訪れる必要があるという。

現在の状況について、「フェンスの内側に残土が積み上げられ、内部(原発施設)が見えにくくなってきている。また、原子炉メーカーが地元の人たちに『あと2年待てば原発は動くから待っていろ』と言っている声も伝わってくる。その一方で同窓会に登壇した同級生が皆の前で『(私のことを)応援している』と言ってくれた。公の場でこうした意見が出るのはこれまでにないことで、とても勇気づけられた」と小笠原さんは話す。

あさこはうすの電気は現在、太陽光設備と風力発電設備でまかなっている。「住めるようにするのが目標」で、アイガモ、鶏、犬などの動物が増えている他、以前から工事を進めていた台所も完成しつつある。小笠原さんはログハウスを続ける理由について、「自然、環境を守りながら子どもたちが安心して遊べる場所にしたい。そして、全国で脱原発に取り組む人たちともつながって想いをひとつにしていきたい。守りたい、失いたくないという気持ちで、これからもがんばっていく」と語る。

一方、水の確保、資金面など悩みは少なくない。水については、井戸を掘ろうと地元のボーリング会社に相談したが、一年以上もなしのつぶてという。街全体が原発容認の空気で包まれる中、何かひとつ事を前に進めるのも容易ではないようだ。また、生活用水については雨水を溜めたりしてしのぎ、飲料水は宅配便や郵便で送っている。「ここで生活をするとどれだけ水が必要なのか、ふだんどれだけ多くの物を捨てているかよく分かる」と言う。トイレも老朽化が進み、建て替えが必要になるなど資金面も悩みだ。

本人が知らない応援プロジェクトに困惑も

応援メッセージを送れ、寄付もできる「あさこはうすゆうびん」。

応援メッセージを送れ、寄付もできる「あさこはうすゆうびん」。

全国から寄せられる寄付は活動の大きな支えだ。「ただ寄付してもらうだけでは心苦しい」という気持ちと、あさこはうすに通じる道に人が通らないと封鎖される心配があるため、代わりに郵便局に行ってもらおうと始まった活動が「あさこはうすゆうびん」。葉書5枚が1000円で、「あさこはうすを応援しよう」というメッセージと寄付を送る目的を兼ねている。

小笠原さんは活動をより多くの人に知ってもらおうとの目的で各地で講演を行っているが、訪れる旅費も基本的に自費だ。講演に訪れた会場で手づくりのイカめしをはじめ、漁でとれた海産品を持参し、訪れた人に販売し資金にあてている。そこまでするのは、反原発と自然を守るという地球環境問題を多くの人に知ってもらいたいからだ。

一方で「あさこはうすの活動を応援しよう」と支援を名目にした寄付、便乗的な活動も悩みの種。実態が不透明だったり、許可を得ていなかったりするケースで、寄付や、応援プロジェクトなど本人の知らないところで立ち上がっているものも少なくないという。

そのひとつがネット上で展開される応援プロジェクト。いつの間にかあさこはうすゆうびんでなく、「普通の葉書を送ろう」にすり替わったホームページが立ち上がっていたという。「当方がその活動を把握しておらず驚きました」。また、「ある団体の募金活動を通じて(寄付金を)送りましたという連絡がきても、実際には届いていないことがありました。寄付してくれた方の気持ちが届いていないのなら申し訳ないです」とも。

あさこはうすの活動は、現在、小笠原さんとその娘さんが行っており、寄付の窓口も本人名義の口座のみで、それ以外の寄付、応援プロジェクトなどの名称がつくものには携わっていないという。これらの事例について残念としながらも「反原発や地球環境問題に対する想いは同じだと思う」と語り、複雑な心境をのぞかせた。

逆風の中で母の代から30年にわたり、原発阻止に孤独な戦いを続けてきた小笠原さんの活動は、各地で注目を集めている。小笠原さんは8月、神奈川県の川崎市で「お話し会」を開き、反原発や地球環境問題への想い、現状や課題などについて語った。この日、お話し会に訪れた人たちからも「井戸掘りに協力したい」といった申し出や、「事務局を作ってはどうか」といった意見が相次いだ。

「あさこはうす」は反原発、地球環境問題の象徴的な存在として賛同の声は広がっているが、個人活動の限界や課題も少なくなく、支援の広がりが期待される。しかし、応援するつもりであっても、方法によっては逆に迷惑になる可能性もある。支援の在り方については知恵が求められそうだ。(ライター 橋本滋)

 

地域で生まれる持続可能への取り組みの芽。気軽に、楽しみながらが長続きの秘訣<地球環境問題 コミュニティーからの挑戦(後編)>

個人でできる地球環境問題 取り組みの輪が広がる

毎年、行われるひかり祭りで使う電力はすべて再生可能エネルギーでまかなっている。(出展:「日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

毎年、行われるひかり祭り(藤野)で使う電力はすべて再生可能エネルギーでまかなっている。(出展:「日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

気候変動など山積する地球環境問題に、世界の国々は有効な解決策を打ち出せない。一方、原発問題や経済環境は厳しさを増し、貧富の格差も広がる。石油依存や、巨大な経済システムの中から抜け出すのは容易ではない。そんな状況の中でひとつの解決策を導き出す手法として、トランジション(移行・脱依存)の活動が注目されている

 

壮大なスケールの社会実験

トランジション・タウンは2005年、イギリスのトットネスという町で脱石油社会へ移行していくための草の根運動として始まった現代は大規模農業を目指す動きが主流だが、この対極として1970年代にパーマネント(permanent)とアグリカルチャー(agriculture)を組み合わせ、「永続する農業」という意味の造語「パーマカルチャー」が生まれた。トランジションは、この概念が基本となっている。

神奈川県・藤野は、パーマカルチャーや自然と暮らしに関わる市民活動も盛ん。

神奈川県・藤野は、パーマカルチャーや自然と暮らしをテーマにする市民活動も盛んだ。

元々パーマカルチャーや自然建築の教師をしていたトランジション・タウン創始者のロブ・ホプキンスさんは、気候変動、エネルギーなどの地球環境問題、厳しい経済環境など様々な困難な課題に対して、「パーマカルチャーやエネルギーを自給する試みの中にヒントが隠れているのではないか」と考えた。この発想を原点として「地域にある資源を生かし、その可能性を最大限引き出す」「足もとにある豊かさを認識する」「人とのつながりを大切しながら、楽しく生きる」「想像力を発揮し、とにかくやってみる」といった具体的な活動に広がっていった。

「トランジションは壮大なスケールの社会実験。うまく行くかは分からない。でも、確信しているのは、政府がやってくれるのを待っていたのでは間に合わないということ。個人として行動していては小さすぎる。しかし、コミュニティーとして行動すれば十分な規模で、しかも間に合うかもしれない」と前出のロブ・ホプキンスさんは語っている。(DVD In Transition2.0より)

食、エネルギーの自給など幅広い活動を展開

神奈川県の藤野で活動するトランジション藤野にもその考えが引き継がれ、ワーキンググループと呼ぶ数人単位のチームで活動している。持続可能な食と農の在り方を模索する「お百姓クラブ」は、食の自給自足、自然の循環を生かした農法、在来種・固定種の継承などに取り組んでいる。また、森に生かされてきた日本人の文化を再認識しようと活動を行っているのが「森部」。女性や子どもなども気軽に参加できる「皮むき間伐」などを中心に、山と人との接点を蘇らせる活動に取り組む。

再生可能エネルギー発電を希望する人向けにシステム組み立てのワークショップを開催(日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

再生可能エネルギー発電を希望する人向けにシステム組み立てのワークショップを開催(日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

また、「藤野電力」は大企業に頼り切っていたエネルギーを自分たちで作ろうと、自然や里山の資源を見直し、自立分散型の自然エネルギーを進めている。再生可能エネルギーの発電システム組み立てワークショップを開催したり、藤野地域で発電設備などの施工にも取り組む。毎年、開催するひかり祭りでコンサートなどに使う電気は、すべて再生可能エネルギーでまかなっている。

藤野での生活には車が欠かせないが、「将来的には石油依存から脱却する」との考えから、電動アシスト自転車や電動スクーターも導入した。また、電気が充電できるようにと現在5カ所に再生可エネルギーで作った電気の充電ステーションを設置済みで、今後も増やしていく考えだ。この他、「内なるトランジション」をテーマに行き過ぎた消費主義、競争主義の背景にある不安やトラウマ、自分自身を見つめるなど心や内面へのアプローチや、「健康・医療」に取り組むワーキンググループもある。

取り組むテーマは様々。地域の魅力を発掘

現在、国内では50カ所のトランジションが活動しているが、その活動内容は様々なテーマに及ぶ。何をするか、こうしなければいないという決まりやルールはなく、各々のトランジションに委ねられている。その地域の特性に応じて、子育て、農業、マーケットなど取り組むテーマは様々。

藤野ひかり祭りには5000人が訪れる。年々、規模が大きくなってきている。

昨年のひかり祭りには5000人が訪れた。年々、規模が大きくなってきている。(撮影:梶間陽一)

「おいしいや嬉しい、楽しいといった活動であれば、人は集まりやすいですね。『お正月に餅を食べたい、それなら自分たちでもち米から作ってみよう』という話が出たので今年は、陸稲(おかぼ)の栽培に挑戦しています。また、メンバーは都内に勤めている人も多いが、藤野で働きたいという声もある。そこで、『こんなことで困っている』『こういう仕事ができる』という人を結ぶハローワークのような仕組みづくりも進めています。地域の声を聞くことで何が求められるのかが分かる。『できるかどうかは分からないが、とりあえずやってみる』というのがトランジションの基本的なスタンスです。そして、それが確実に地域力を上げ、きっと大きな問題も解決できるようになると考えています。こうなりたいという未来を描いて、創造力を働かすこと、楽しみながら活動していくことを大事にしています」とトランジション藤野の小山宮佳江さんは言う。

「個人では小さすぎるが、コミュニティーとして行動すれば十分な規模で、しかも間に合うかもしれない」という創始者ロブ・ホプキンスさんの想いは共感を集め、トランジションの活動は瞬く間に世界43カ国、1000を超える地域で行われる活動に拡大した。

人類は多くの自然を壊しながら、経済的な繁栄を築いてきたが、そこで失うものも大きいということに一部の人々は気づき始めた。トランジションの活動を行いながら、本来の自分を取り戻したり、人とのつながりの大切さに気づいた人がいる。そして、コミュニティーでの活動も少しずつ成果が出始めている。地域で自分たちができる範囲で地球環境問題に取り組む人々、行動しようという人々の輪は着実に広がろうとしている。(ライター 橋本滋)

石油に依存しない暮らしを目指す草の根・市民活動「トランジション」。見直される「お互い様」という生き方 <地球環境問題 コミュニティーからの挑戦(前編)>

 地域でゆるくつながって、自分ができることをする

芸術の街らしく、町の所々に設置した再生可能エネルギーの充電スタンドは自然なオブジェとして景観に溶け込んでいる。

藤野(神奈川県)では町の所々に再生可能エネルギーの充電スタンドが設置されている。芸術の街らしくオブジェとしてアレンジされ、景観に溶け込んでいる。

石油に依存しない暮らしを目指す草の根の市民活動として2005年にイギリスで誕生した「トランジション(移行・脱依存)」。現在、世界43カ国、1000を超える地域でトランジション・タウンが生まれ、日本でも約50カ所で活動が行われている。「50年後、100年後の未来を考えて行動することは、一人では難しいけれどみんなと一緒ならできるかも」「できることからやってみる」。そんな取り組みやすさが共感を呼び、活動の輪が広がっている。

 

国内の草分け的存在 トランジション藤野

トランジション・タウンは、石油依存や、大量消費の生活から持続可能な生き方にトランジット(移行・脱依存)していこうという思う人たちが集うコミュニティー。その中で「一人ひとりができることをしていくこと」を基本として、同じ志向の仲間が地域の中でゆるくつながり、様々な活動に取り組んでいる。

外部の見学者向けに行われるツアーには、環境問題を学んでいる大学生、仕事に役立てたいという会社員まで様々な立場の人が参加する。

外部の見学者向けに行われるツアーには、環境問題を学んでいる大学生、仕事の役に立てたいという会社員まで様々な立場の人が参加する。

トランジション藤野は2008年、国内におけるトランジットの広がりにパイオニア的な役割を果たした榎本英剛氏が、友人3人と藤野に移住してスタートしたのが始まりで、草分け的な存在だ。神奈川県の藤野は都心から電車で約1時間、同県の水源地・相模湖や、森など豊かな自然が広がる。人口約1万人で、戦時中に疎開画家が移り住んだり、芸術の街として街起こしをされた経緯もあり、芸術家が多く活動するほか、近年は自然志向の高い人が移り住むようになった。

トランジションを仕事のヒントにしようと考える人もいる。藤野に移り住んで半年という野口正明さんは、外資系企業に勤める経営コンサルタントで、今も月に数回、片道2時間以上かけて都内に通勤する会社員だ。トランジションに参加した動機は、「ここでは大雪に見舞われれば、誰彼となく自然に助け合う。こうした個人の自発性こそ、今、企業経営に求められていること。仕事のヒントになると思ったのがきっかけだった」と話す。この他、「トランジション藤野の活動に魅力を感じた」「子どもが学校に入学した」「農業をしたかった」など、参加の理由は人それぞれだ。

地域通貨「萬(よろづ)」は300人が利用

現在、コアメンバーは20人ほど。当初、映画の上映会、保存食づくりなどを単発的に行ってきたが、現在はお百姓クラブ(食の自給自足)、藤野電力(自然エネルギーの自給)、森部(新しい森の文化発信)など活動の幅が広がっている。

地域通貨「萬」で使う通帳。利用者は300人までに増えた。

地域通貨「萬」で使う通帳。利用者は300人までに増えた。

2010年からは現在、利用者が300人に広がっている地域通貨「萬(よろづ)」を始めた。「萬」は、地域内で使える「お金」。例えば、パソコンを教えてあげる代わりに、野菜をもらうといったように、サービスを受けたら、自分のできることでお返しするといった形で使う。藤野地域通貨「よろづ屋」の目安は1萬=1円で、紙幣ではなく「通帳」を介して行われる。メンバー間で通帳と情報(出来ること、して欲しいこと、連絡先など)を共有して、一対一で取引する。何かをしたときはプラスを、してもらったときはマイナスを書き込み、お互いにサインする。取引例は車の送迎、料理を作るなど様々。例えば、ブログで「よろづでヘアカット」という記事を見た人ができる人に連絡を取る。自宅まで来てもらい、小学生の娘、父、母の前髪をカットしてもらい、3000萬と夕食で取引成立といった感じだ。

「よろづ屋」は「0萬」からスタートするので、メンバー同士の萬の合計は必ず「ゼロ」になり、何も行わなければ「ゼロ」のまま。たくさん取引が起こればそれだけ価値が生まれたことになるが、その価値とは単に物やエネルギーだけでなく、人々の間に「絆」が生まれるのもユニークなところだ。

参加する全員に役割がある

地域通貨により、住民のつながりが生まれ、住民に何が求められているか分かるようになった。

住民のつながりが生まれるとともに、住民から何が求められているか分かるのも地域通貨の良さだ。

「お互い様」という関係、「誰も、のけものにしない」というのもトランジションの魅力

「何も自分はできないと思っている人でも、誰かが旅行にでかけるときに、庭の水撒きなどを代行できる。『これはできないけど、これはできる』とやり取りを交わすことで、地域の人のつながりができるとともに、これが欲しいというニーズがあるのが分かってくるし、それなら自分達で作ろうとみんなで協力して取り組むこともできる。地域通貨は人と人がつながって使える、そんなお互いさまのお金です。『マイナスばかりが貯まってしまい、追い目に感じる』という人もいますが、そういう人には誰かがそれだけ役に立ったということで、『いいことをしたんですよ』と言っています」と事務局の担当者は笑う。

地域、そしてそこで暮らす人たちの関係を大事にしながら、それぞれの個性も大事にする。そんなゆるいつながりが、トランジション・タウンの特長だ。「会社と往復するだけの忙しい毎日。このままの生き方でよいのか、自分を見つめ直したかった」など、仕事や、自分の人生やライフスタイルをどう考えるべきかなど、将来へのヒントにしたいという人もいる。

都内でOLをしていた女性は、「冬場、雪がたくさん積もって怖かったが、近所の人が声をかけてくれたので安心した。都内に暮らしていたときは、仕事を中心にして住む場所を決めるという感じだったが、(藤野に来てからは)何を最優先に考えるか選択や判断の基準が変わった」と言う。

「生きるのが楽しくなった」「人の役に立てるのがうれしい」という参加者の言葉は印象的だ。かつて田舎の濃密な人間関係を嫌い、多くの若者が都会へと移り住んでいった。そして、便利な都会暮らしの一方で、流される日々、人間関係が希薄になり、多くの人がこのままでいいのかと疑問を感じている。トランジション活動には、それぞれの人が抱える疑問や悩み、生き方”を見つけるヒントがあるようだ。(ライター 橋本滋)【次回に続く】

目指すは、福島・会津の豊かな自然エネルギーを起爆剤に地域再生 会津電力社長・佐藤さん <地球環境問題 地域、エネルギーからの変革> 

 

 

会津電力社長の佐藤さんは、地元で220年以上続く酒蔵の9代目でもある。

会津電力社長の佐藤さんは、地元で220年以上続く酒蔵の9代目。

地球環境問題を考える上でエネルギーは重要課題。再生可能エネルギーが注目を集め、世界で広がっている。そんな中で福島県・会津で再生可能エネルギー事業に取り組む会津電力社長の佐藤弥右衛門さんが、シェーナウ環境賞「電力革命児」を受賞した。シェーナウ環境賞はドイツのシェーナウ電力(※)が、再生可能エネルギーの未来に貢献した人に贈る賞で、佐藤さんは受賞を受け、喜びと再生可能エネルギー事業で地域活性化に挑む想いを語った。

※シェーナウ電力

1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに市民らが中心となり設立。エコなエネルギー供給の実現を目指し、先駆けて既存の電力会社から電力網の買い取りを開始した。現在、ドイツ最大級のエコ電力会社のひとつに数えられる。

――シェーナウ環境賞受賞について

「国内でも地域主導型で再生可能エネルギー事業に取り組む“ご当地エネルギー”が広がっている。私が全国ご当地エネルギー協会の理事であること、また、原発事故が起きた福島という点も考慮されて選ばれたということだろう。“ご当地エネルギー”の活動に携わった人たちに全員に贈られた賞だ」

メガソーラー建設にも着工。将来は再生エネルギーで原発5基分の電気をまかなう計画だ。

メガソーラー建設にも着工。将来は再生エネルギーで原発5基分の電気をまかなう計画だ。

「昨年8月、会津電力を設立して事業を開始した。福島には水力発電をはじめ再生可能エネルギーが豊富にあるのに、『電気が足りない足りない』と言って原発が10機もある。誰のための電気なのかと思うと憤懣(ふんまん)やるかたない。今、地方では再生エネルギーに取り組む動きが広がっており、5年後、10年後には大きな力になっていくだろうし、それが、地球環境問題や高齢化、過疎などの問題解決や、地域の自立にもつながっていく。様々な困難を乗り越え、地域に再生エネルギーを普及させたシェーナウ電力から今回、賞をいただけたことは率直にうれしい。シェーナウ電力を超えられるように努力していきたい」

――220年以上続く酒蔵の9代目

「以前は大量生産、大量販売という流れがあり、低価格化が進んだ結果、品質の低い日本酒も出回ったがおいしくなかったので、結局残らなかった。現在は、地元の米、水にこだわった『郷酒(さとざけ)』が人気で、吟醸酒など高品質な酒が消費者から求められるようになっている。

酒も再生エネルギーで作ろうと自社の蔵の屋根に太陽光パネルを設置した。

酒も再生エネルギーで作ろうと自社の蔵の屋根に太陽光パネルを設置した。

地球環境問題への配慮、そして安全・安心を求める声も大きく、高価にはなるが原材料の品質の良さもいい酒づくりには欠かせない。昔は米を作る際、農薬を使うのが当たり前だったが、今はできるだけ農薬を使わないことが求められる時代だ。無農薬は難しいが、できるだけ農薬を使わない生産者を探し、できないことはできないが、いいものを作るために何ができるを話し合ってきた。ウソをつかないこと、原材料の生産者と酒蔵がお互いに信頼できる関係『顔が見える関係づくり』が大切で、これは電気も同じだ。企業、工場が海外へどんどん移転しているのに、それでも電気が足りないという。いったいどこで電気を使うというのか。これからは使う分だけ、電気を作ればいい。

地球環境問題の観点でどうか、あるいはどういうところで、どのようにして作られたエネルギーなのか、消費者が選ぶ時代だ。水力は水色、バイオマスは緑色、原発は黒色…など、自分が使っているエネルギーが分かるよう、色をつけたら消費者も選ぶ際、分かりやすくていいと思う。また、購入者には地酒をプレゼントしたり、大口のお客様には地元の温泉宿泊券をつけてもいいのではないか。こうした仕組みを作っていくのが私たちの仕事だ」

――福島への想い

「これまで福島には水、食糧があるから安心だと思っていたが、原発事故で思い知ったのがエネルギーの大切さだった。福島で作られたエネルギーは都会に送っていたが、これからは自分たちで使う電気を作ればいいし、水、食糧、エネルギーを自分たちで作れるようになれば地方自治の在り方も変わる。会津電力は10年後、売上1000億円以上を目指している。安くて安全な電気を提供し、地域、産業を活性化していきたいが、『安い電気があるから買ってください』という売り方はしない。『クリーンな電気を使えば、温暖化など地球環境問題の改善にも貢献できるし、企業イメージもアップするはずだ。

福島は水、食糧は豊富だし、エネルギーを自給するのだから、どんどん豊かになっていくだろう。先進的な企業が進出し、雇用も生まれるといったサイクルが生まれていけばいいし、世界を代表するIT企業に福島が選ばれるようになればいい。一方、福島原発は未だに危険で、使用済み核燃料の問題も解決していない状況を見れば、日本の思想として反原発、卒原発に向かうのが当然の流れではないかと思う。『こんなにひどい事故を起こしたのだから、優先して福島の解決に全力を傾けよう』と考えるのが普通ではないか。『人様のために生きなさい』と教えられてきた私からすると(今の政治姿勢は)違和感を覚える」

<地球環境問題、解決の一歩は、脱原発、再生可能エネルギーへの転換>

「エネルギーの自給は地方自治を変える」と語る佐藤さん。

「エネルギーの自給は地方自治を変える」と語る佐藤さん。

佐藤さんは220年以上続く酒蔵・大和川酒造店の9代目。本業は酒蔵の社長だが、昨年8月に会津電力の社長に就任し、二足のわらじを履く。会津電力は太陽光発電所を24カ所設置。5月には1MWのメガソーラー発電所を起工した。今後は山林の整備・保全を進めるとともに、間伐材などを利用したバイオマス発電、東京電力が福島県内に保有する大規模水力発電の所有権を取り戻し、原子力発電5基に相当する電力供給の実現を目指している。

「間もなく会社を設立してから1年になろうとしているが、全国で再生エネルギーに取り組む皆さんと出会えたことなど、楽しいことばかり。これは本業ではけっして味わえない経験でした」と語る。ホンモノの酒造り、再生エネルギーによる地域活性化に取り組む佐藤さんの目標は、福島県全体の電気を東京電力から自立させることだ。「人様のために生きる」がモットー。福島、会津への想いは誰にも負けない。(ライター 橋本滋)

ウナギがレッドデータに。乱獲、ダイナマイト漁などで水産資源もピンチに。懸念される動植物、生態系の地球環境問題

動植物の生息環境の悪化、急速に進む

6月12日、ICUNのレッドリストにニホンウナギが絶滅危機としてレッドリストに掲載された。WWFジャパンが「早急な対策が必要」との声明を出す一方、国立環境研究所などの研究グループも100年後、300種以上の維管束植物が絶滅するとの予測を発表。生息環境の悪化、地球環境問題により、動植物、魚類が絶滅の危機に追い込まれている状況が明らかになった。

レッドデータに入ったウナギ。ウナギが食べられなくなる、そんな日が来るかもしれない。

レッドデータに載ったウナギ。法的拘束力はないものの、ウナギが食べられなくなる、将来そんな日が来るかもしれない。

シラスウナギの乱獲でウナギ激減

すでに絶滅の危機がもっとも高い種としてレッドリストに掲載されるヨーロッパウナギをはじめ、最近、食用として漁獲されるようになり東南アジアで養殖が盛んなビカーラ種と呼ばれるウナギも「低危険種」から「近危急種」にランクアップするなど、ウナギの減少が深刻だ。世界のウナギの総生産量の95%は養殖(FAO)によるもので、海や川から採取したシラスウナギを獲り、いけすで育てる。ウナギが減っている原因として、まず挙げられるのが、シラスウナギの過剰な漁獲。野生のウナギの減少により、近い将来、養殖そのものが成り立たなくなり、「ウナギが食べられなくなる日の到来」が現実味を帯びてきた。種の絶滅は、地球環境問題の深刻な懸念のひとつだ。

密漁、密輸も横行

WWFジャパンはホームページに「緊急求められるウナギの資源管理」を掲載し、その中でシラスウナギの減少が取引価格の高騰を招き、それに伴い密漁、密輸も増加していると指摘する。2013年度、各県に報告されたニホンウナギのシラスウナギの採捕量合計量が、実際に養殖場に入れられた総量を大きく下回わっていた他、フィリピンではシラスウナギの減少を受けて2012年に輸出を禁止したが、2013年の日本の貿易統計では2トンを超えるシラスウナギが輸入された記録があるなど食い違いが見られ、シラスウナギのやり取りにおいて違法な取引が行われている実態が明らかになっている。WWFジャパンは、「ウナギを保全するためには、生息域に関係する国々が協力して資源管理、違法な行為の取り締まりを強化するとともに、養殖業者、小売り、外食産業の連携も不可欠」との見解を示す。

日本のシラスウナギの推移。(独立行政法人 水産総合センター)

日本におけるシラスウナギ漁獲量の推移。1990年以降、大幅に落ち込んでいるのが分かる。(独立行政法人 水産総合センター)

人が地球環境問題の一因に

また、ウナギだけでなく、世界の水産資源も危機的な状況に陥っている。1950年に2000万トンだった漁獲量は、1980年までに3倍に急増。1980年の後半以降、漁獲量は頭打ちになり、現在、日本周辺では41%の水産資源が枯渇状況にあるという。乱獲や資源管理の他にも生息環境の悪化などが影響していると考えられるが、そのひとつが海外を中心に行われている「ダイナマイト漁」だ。ダイナマイトを海中に投げ込んで爆発させ、死んで浮きあがってきた魚を捕獲する方法で、ガラス瓶に火薬を詰めたタイプのものが多く使われるため、サンゴ礁が破壊され魚が住めなくなる。一時的にはたくさんの魚がとれるが、「再生が難しくなる破壊的な漁業(WWFジャパン)」。今、世界の海では「獲りすぎ」が、地球環境問題のひとつの要因として問題視されている

植物も100年後、370種以上が絶滅へ

一方、国立環境研究所・九州大学ほかの研究グループは、日本植物分類学会と環境省が植物レッドデータブック編集のために行った調査データをもとに、1618種の維管束植物の絶滅リスクの定量評価を行った。その結果、100年後には世界全体の同植物絶滅スピードの2~3倍に相当する370種~561種が絶滅する可能性があることが分かった。同研究グループは「絶滅危惧種の保全には保護区の拡充が有効で、保全効果をより高めるため管理の実施が重要」との見解を示めした。

植物の生息環境も悪化の一途をたどっている(写真はイメージ)

植物の生息環境も悪化の一途をたどっている(写真はイメージ)

急がれる地球環境問題への対策

小さな昆虫などの生物が鳥に食べられ、その鳥が糞を落とし大地を豊かにし、植物が育つ。またその鳥はより大きな動物に食べられるというサイクルにより、生態系は維持されている。ひとつの種が消えることにより、このバランスは崩れていく。こうした動植物の危機的な状況、地球環境問題の原因のほとんどは人為的なものだ。人は自分たちが「快適な社会」を作ることを優先し、森、海、川、動物たちの住みかを壊し続けている。こうした循環のサイクルが壊れれば、食糧危機や新たな病気などの問題をひき起こす。畢竟(ひっきょう)、人も生存できない世界ということでもある。早急な対策が求められる。(ライター 橋本滋)

<地球環境問題 自然を考える>

青森・岩手・宮城・福島にまたがる700キロの長距離遊歩道「みちのく潮風トレイル」 

トレイルを歩いて東北の自然に触れる <健康+レジャーで地球環境問題を考える

震災の被害を受けた東北地方太平洋沿岸地域の復興を目指し、環境省が進める青森県八戸市と福島県相馬市を結ぶトレイルコース(長距離自然歩道)「みちのく潮風トレイル」の一部(青森県八戸市~岩手県久慈市間/100キロ、昨年11月に開通)において、7月から踏破認定制度が始まり本格的に利用促進を図る。これらの取組みを広報するため、6月21、22日に東京・六本木ヒルズでイベントが行われる。

東北4県にわたり整備が進められる総距離700キロに及ぶみちのく潮風トレイル。

東北4県にわたり設定が進められる総距離700キロに及ぶみちのく潮風トレイル。

東北の復興を目指し整備

東日本大震災で漁業や自然公園も大きな被害を受けた東北地方太平洋沿岸地域の復興を目指し、環境省は「三陸復興国立公園」の創設を核にするグリーン復興ビジョンを策定。青森・岩手・宮城・福島の4県31市町村にまたがる青森県八戸市蕪島から福島県相馬市松川浦の間を結ぶ、総距離700キロの長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」の設定を進めている。トレイルとは森林、原野、里山、海岸などを通る「歩くための道」のこと。欧米には総距離数千キロに及ぶロングトレイルがあり、「歩く旅」を楽しむ愛好家らは世界に広がっているという。ゆっくり歩きながら、自然や景勝地、集落などの風景を見たり、歴史、風俗、食文化などに触れられる点が人気を集めている。

トレイルを歩きながら、東北の海岸線をはじめ、美しい景色が望める。

トレイルを歩きながら、東北の海岸線をはじめ、美しい風景が臨める。

地元の人たちも協力

「みちのく潮風トレイル」は、利用者と地域の人々などを「結ぶ道」がコンセプト。地域の宝を活かした自然を深く楽しむ旅、里山・里海を利用したフィールドミュージアムなどの要素を取り入れ、東北の暮らし、町並み、史跡、寺社仏閣、津波の痕跡をはじめ、里山、里海、棚田、現地の歴史や文化について学んだり、体験できるスポットを盛り込む他、関係自治体や地元活動団体、商店や地元企業と協力して特色あるコースを作ったり、ワークショップや体験学習なども取り入れる。参加者はコースを歩きながら、地域の文化などに触れられるのが魅力だ。

青森県八戸市~久慈市間が開通

昨年11月に開通したのが青森県八戸市~岩手県久慈市間の100キロで、7月からは踏破認定のための記念スタンプなどがチェックポイントに設置され、区間内でトレイルが一層楽しめるようになる。見どころは2013年に日本ジオパークに認定された三陸ジオパークをはじめ、天然の芝生地が海際まで広がる種差天然芝生地(八戸市)、高台から眺める海岸線の景観が美しいトレッキングコース(階上町)、南部潜りやウニが特産の漁業の町(洋野町)、あまちゃんのロケ地になった小袖海岸(久慈市)などがある。

写真は洋野町で長く伝わる伝統潜水方法「南部潜り」。各地の文化に触れられるのもトレイルの魅力。

写真は洋野町で長く伝わる伝統潜水方法「南部潜り」。各地の文化に触れられるのもトレイルの魅力。

6月21、22日、東京・六本木で広報イベント

4月に全線で運転を再開した三陸鉄道を利用して日帰りや一泊の旅行を組んだり、トレイルをセットにした三陸の旅などを提案し既存のコースについてはさらなる充実を図っていくことなども期待されるほか、順次、残りの区間についても設定を進めていく。6月21、22日、東京の六本木ヒルズで、みちのく潮風トレイルフェスティバルが開かれ、間寛平さんのトークショー、ミニライブ、トレイルの映像体験、東北グルメ&物産展、ワークショップなどが行われる。

<自然の中を歩きながら、地球環境問題を考える>

「歩くことは健康に良い」とよく言われるが、特に欧米には多くのトレイルコースがあるそうで、自然の下でウォーキングを楽しむ人が多いそうだ。手軽にでき、健康にもいい。また、自然に触れることで、自然の大事さ、地球環境問題にも関心が高まるのではないか。日本でもトレイルがもっと広まっていけばいい。(ライター 橋本滋)