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世界で自然エネルギーへのシフトが進む。突出する中国、アメリカ、ドイツ…そして日本は?<地球環境問題 エネルギー編>

地球温暖化、地球環境問題への関心の高まりを背景として、世界で自然エネルギーが急速に拡大している。2013年末の自然エネルギーは世界の総発電量の増加量分のうち56%を占めるまでになり、世界全体のエネルギー消費量の約5分の1に達する見通しになった。一方で、自然エネルギーでリードする国々と日本が引き離されている現状が見えてきた。

世界の自然エネルギー導入量は過去最高水準に達した。

世界の自然エネルギー導入量は過去最高水準に達した。

 世界で自然エネルギー導入が急増

地球環境問題が世界の共通課題として認識される中、とりわけ再生可能エネルギーへの関心は高い。6月4日、米国・ニューヨークで行われた、すべての人のための持続可能エネルギー国連フォーラムで、国連ドイツ政府代表部は「2013年の世界の自然エネルギー発電量は記録的な水準へ急増した」と報告した。REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)がまとめた「自然エネルギー白書2014版」によると、世界の自然エネルギーの発電量は2012年から8.3%増加し、2013年末には1560GW(15億6000万kw)に達した。世界の総発電量のうち増加量分の56%にあたり、世界のエネルギー消費量の約5分の1に達する見通しだ。

自然エネルギー大幅増のけん引役を担ってきたのが新興国。地球環境問題に対する意識の高まりを背景に、普及の支援政策を採用する国が2005年の15カ国から、95カ国と6倍以上に急増。また、都市、州、地域レベルにおいて100%自然エネルギーで供給する体制へ転換する動きが広がる一方、ジブチ共和国、スコットランド、ツバルが2020年までに100%自然エネルギー源からの電力供給を目指している。

自然エネルギーのREN21のアルソロス・ゼルボス議長は、「議論の中心はもはや自然エネルギーがエネルギーサービスを担えるかどうかではなく、自然エネルギー100%を実現するために、導入ペースをどうすれば最大限加速できるのか、という点に変わっている。(実現には)現在の寄せ集めの政策や取り組みを継続させるだけでは不十分だ」と語った。

中国が突出。原発の発電量を上回る

自然エネルギーの内訳は、水力発電が1000GW(10億KW)で3分の1を占め、それ以外は太陽光、風力、バイオマスなどで560GW(5億6000万KW)。2013年の新規導入量は太陽光発電が38GW(3800万KW)で、風力発電の同35GW(3500万GW)を初めて抜いた。2012年、米国の風力発電市場の急速な市場の縮小を受け10GW(1000万KW)減少したものの、欧州などで洋上風力発電1.6GW(160万KW)が進み、記録的な年になった。

自然エネルギー累積の発電設備容量で上位なのは、中国、アメリカ、ブラジル、カナダ、ドイツ。中でも突出するのが中国で、自然エネルギーが爆発的な勢いで伸びており、2013年には原子力発電を上回った。世界全体の太陽光発電の新規導入量では、中国が3分の1を占め日本と米国がそれに続いた。風力発電でも長年、市場をけん引してきたドイツを中国、米国が追い越し、中でも中国はドイツの3倍になり、世界屈指の風力発電大国になった。温暖化、地球環境問題に消極的という印象がある中国、アメリカだが、すでに再生可能エネルギーの分野で日本より上位にいる。

ドイツの電気代が高い本当の理由

一方、日本は太陽光発電が大きく伸びたものの、人口当たりで見た太陽光の発電量はドイツに遠く及ばない。風力発電でスウェーデンと比較すると導入状況で3分の2程度に過ぎず、人口あたりで比べると20倍以上の開きがある。ドイツでは電力の取引料金は今後、劇的に低下する見通しで、風力発電では1KWHあたり4セントの国や地域も出てきているという。そこでよく耳にするのは、「ドイツの電気料金は年々、値上がりしている」という指摘だ。

ドイツの家庭用電気料金の推移(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

ドイツの家庭用電気料金の推移(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

ドイツの電気料金は2000年以降、右肩上がりで上昇しているが、それは自然エネルギーそのものが高いということではない。ドイツの電気代を高額にしているのは、再生可能エネルギーの買取負担だけでなく、付加価値税、自治体税、付加価値税などの税金が加わっているためだ。電気代を比較するとドイツの1KWHあたり30円(2011年)に対し、東京電力26.7円(2012年8月)となりドイツの方が高いように見えるが、税抜きで見るとドイツ20.6円、東京電力25.1円となり逆転する。

風力発電においては、現在では日本の電気代はドイツなど比べ、約3倍(太陽光発電の場合ドイツ、風力の場合スウェーデンとの比較)。しかも、核廃棄物の処理負担、損害保険の価格は反映されていないため、今後、日本の電気代は上昇していく可能性が高い。固定価格買取制度(FIT)により再生可能エネルギーを高値で買い取るようになり、住宅用太陽光の発電コストも直近2年で33.4円~38.3円から29.8円と下がる傾向にあるものの、日本の再生エネルギーは国際的に見て高くコスト削減が課題だ。

家庭用電気代の日独比較(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

家庭用電気代の日独比較(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

日本は自然エネルギーを活かせば資源大国になれる

地球環境問題への配慮、自然エネルギーの価格下落もあって、自然エネルギーへのシフトが世界的に進んでいる。また、2022年までに原発廃止を決めたドイツをはじめ、米国では2013年、5基の原発が運転停止、9基の新規原発の建設計画が中止になるなど脱原発が進む。

日本はというと、政府はエネルギー基本計画で自然エネルギーの数字目標を設定せず、順次原発再稼働を進める方針だが、世界を見れば原発推進の立場をとる少数派だ。電力会社が連携可能量という上限を設け受入れを制限していることが、国内の自然エネルギーの普及が進まない一因となっており、電力系統への接続の改善をはじめ、自然エネルギーの目標数値設定、規制の撤廃、電力価格の引き下げなど課題は多い。

再生可能エネルギーの普及は、地球環境問題にも有効

元スウェーデンのエネルギー庁長官で自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長は、「これまで日本は資源がないと化石燃料や原発に頼ってきたが、地域エネルギー資源を有効利用すれば、資源豊かな国になれる。これまでEU諸国が経験した数々の失敗から学べるのも日本にとって有利な点」と話す。ドイツの取り組みや自然エネルギーについて「天候に左右されるので不安定」といった指摘もあるが、EUでは相互に電力を融通し合う仕組みがあって電力の供給状況がチェックされるとともに、電力が供給できなかったときの取り決めも供給者とユーザーの間できちんと決まっており、問題なく機能しているという。また、ドイツでは高い電気代を避け、隣国に企業が移っているとの指摘があることについて、同氏は「自然エネルギー導入の初期段階にそうした事例もあったが、最近は聞かない」と語る。

温暖化や地球環境問題においても有効な再生可能エネルギーへのシフトは世界の潮流でもある再生エネルギーで遅れをとっている日本だが、2016年から電気の小売が全面自由化される。コストダウンには発電量の増加が不可欠であり、再生可能エネルギーが普及しやすい環境の整備が期待される。

作る人も着る人もみんなが幸せになるオシャレ=エシカルファッションに注目集まる<地球環境問題をファッションで解決する>

エシカルファッションが注目されている。東京・世田谷区でファッション×サスティナブルの学校「エシカルファッションカレッジ」が1日限定で開かれ、エシカルファッションショー、ワークショップなどが行われた。ファッション関係者をはじめ、学生ら約1000人が参加し、高い関心を集めた。

エシカルファッションカレッジで行われたファッションショー。若い女性、ファッション関係者らに注目を集めていた。

エシカルファッションカレッジで行われたファッションショー。若い女性、ファッション関係者らに注目を集めていた。

ファストファッションに対抗

イギリスなどで人気が高いエシカルファッションは、近年、国内でも百貨店などで取り扱われるようになるなど認知度が高まりつつある。エシカルには「道徳的な」とか「倫理的な」といった意味があり、自然環境に負荷をかけない原材料を使用したり、製造や流通過程などにも配慮された商品のことで、服、アクセサリー、バックなどさまざまなものがある。海外では製造にあたる労働者が低賃金で迎えられたり、児童労働、悪辣な労働環境などが問題となっているが、弱い立場の労働者、生産者にきちんと対価を支払い、刺繍や手織り、染色といった地域の伝統や技術を継承するとともに、消費者ニーズも汲んだファッションを創造することを目指す。低コストで製造し、世界に大量に安く販売するファストフードになぞりファストファッションと言われる勢力に対し、対極的な立場をとるファッションスタイルとして注目されている。

Tシャツを作るには大量の水と薬品が使われるという。エシカルTシャツをプリントするデモンストレーション。

Tシャツを作るには大量の水と薬品が使われるという。エシカルTシャツをプリントするデモンストレーション。

 専門家もクオリティーを高く評価

発展途上国の生活改善と自立を支援するフェアトレードと似ているが、著名デザイナーが多く参画しているためデザイン性が高いのがエシカルの特長。この日のイベントは「ファッションを通じ、ちょっといい未来を提案する。誰もがハッピーになるオシャレを考える」をテーマに企画されたもので、エシカルファッション関連の専門家を招き講演会が行われた他、自然素材の染料を使ったTシャツのプリントや、オーガニックコットンでバッグを作るなどワークショップが開かれた。ファッションショーでは、最新のエシカルファッションが紹介された。「これからのファッション」をテーマにした講演会の中で、有名ファッション雑誌の編集長などを歴任したファッションジャーナリストの生駒芳子氏は、「オシャレで、洗練されたものばかりだった」と高く評価した。

エシカルの普及には、ビジネスとして成り立つことが重要という。エシカルの未来について語る企業経営者。

エシカルの普及には、ビジネスとして成り立つことが重要という。エシカルの未来について語る企業経営者。

積極的に取り組む企業も

エシカルに積極的に取り組む企業も増えている。若者からはあえて着こんだ感じがする色落ちしたジーンズが人気だが、ジーンズ大手のリー・ジャパンでは、そのために行われている環境負荷の大きい染色工程であるケミカルウオッシュなどを止めたり、材料となるオーガニックコットンの生産地を訪れ、児童労働などが行われていないかなど現場をチェックし、基準を設ける取り組みを行っているという。同社の細川秀和氏は、今後のエシカルファッションの見通しについて、「『手間をかけて、どうしてそんなに面倒なことをするのか』といった声もある。しかし、そういう人でもおばあちゃんからもらったカバンを大切に使っていることはあるだろうし、(こうした目に見えない)価値をきちんと伝えることが大切。当社でもこうした取り組みを評価して、購入してくださるお客様が徐々に増えている。ビジネスとしてきちんと利益が出るようになれば、企業も多く参入するようになり普及が進む」。国内フェアトレードショップの草分け的存在のピープル・ツリーのサフィア・ミニー氏は、「少し高くても、長く使える、想いのあるブランドを購入するべき。自分の持っているお金をいい方向に使ってもえらえるようになればいい」と話す。

利益が出せるビジネスにできるかが普及の鍵

「効率、利益至上という誰かの犠牲のもとに成り立つ経済ではなく、これからはグリーンエコノミーの時代。エシカルファッションこそ、ラグジュアリーであるということを伝えていきたい(生駒氏)」と話す。ファッション業界への就職を目指す学生らは真剣な表情で聞き入っていた。エシカル商品の広がりが望まれる一方で、本当に自然に優しい材料で製造されているかや、労働者にきちんと対価が支払われているのかどうかといったチェック体制、さらには、高い利益を狙って偽物の横行、それを防止する認証団体も増え、統一されないといった問題点などが山積する。こうした一つひとつの課題を解決していくことが、普及の鍵になりそうだ。(ライター 橋本滋)

「自分たちで自分たちの街の電気を作る!」 市民出資で再生可能エネ進める動き広がる<ライフスタイル 地域とお金の流れが変わる> 

地球規模で自然エネルギーへシフトが進む中、市民主導で自然エネルギー導入を目指す動きが各地で活発化。市民から募った出資で風車などを建設してエネルギーを作って売電したり、産業の育成につなげている。新しいヒト、モノ、カネの流れが生まれており、地域活性化の起爆剤としての役割も期待されている。

市民主導で再生可能エネルギーを導入する動きが広がっている。

市民主導で再生可能エネルギーを導入する動きが広がっている。

エネルギーの自給で破綻寸前だった島が再生

映画「パワー・トウ・ザ・ピープル」では、100%の電気の自給を実現したデンマークのサムソ島を取り上げる。15年前、大企業の合併により地元の水産加工工場が移転した結果100人が失業し、経済破綻寸前だった島では、住民たちが出資して風車を建設することにした。そして、発電した電気を自分たちで利用するだけでなく、売電により利益を出すようになり、さらに、ネットワークを構築し隣人にも分配するようになる。地域住民が自然エネルギーを進めるために出資し、発電したエネルギーを地域住民で共有する「分散型エネルギー市場」の誕生だ。サムソ島では、こうした従来の大企業がつくる電気と決別することで、衰退に向かう一方だった地域が、住民主導で自立を目指す新しい一歩を踏み出した。

国内でも「市民風車」などが続々誕生

国内でも市民らが主体となって、自然エネルギーを普及させようという動きが広がる。出資者の募集や運営管理を担ってきた国内の草分け的な存在が、自然エネルギーファンド(東京都中野区/代表取締役・鈴木亨)だ。2001年、国内初となる市民出資による市民風車を北海道(浜頓別町)に設置して以来、東北、北陸、関東に10基を超える市民風車を建設。2005年には、長野県・飯田市で「おひさまエネルギー市民ファンド」を作り、太陽光、バイオマスを資源に、行政や金融機関と協力し地域エネルギー事業をスタートさせた。両ファンド合せて出資金は約40億円、参加者は延べ6000人超にのぼる。4月、都内で石狩(北海道)、会津(福島)、小田原(神奈川)、山口の4つのご当地エネルギー市民ファンドが説明会を行った。これらは自然エネルギーを作りだす設備の建設や運営費用にかかる費用を賄う目的で作られたファンド。目標利回りは2~2.5%で、被災地寄付金付きや酒や野菜など地域の特産品をプレゼントする特典をつけるものもある。自然エネルギー市民ファンドの鈴木氏は、「全国各地で続々と地域主体の再エネ事業が立ち上がり、地域事業への応援も始めている。放射能汚染も地球温暖化も心配しなくても済む、新しいエネルギー社会と豊かな地域社会をつくっていきたい」と語る。

野菜や特産品をプレゼントするファンドもあり。地場産業の育成にも効果が期待されている。

野菜や特産品をプレゼントするファンドもあり。地場産業の育成にも効果が期待されている。

集めた資金で、被災した酒造所が復興

山口で被災した地元の銘酒を作る酒蔵の復旧にあてる寄付付きの「みんなで応援やまぐちソーラーファンド2014」では、出資者に酒や野菜を贈る。2013年7月、集中豪雨により高さ3メートルの濁流が襲い、山口県萩市の澄川酒造場(澄川宣史社長)の自宅、蔵、精米機、酒づくりに必要なタンクは水没、パソコンのデータ、通帳やこれまでの関係資料などもすべて消失する壊滅的な被害を受けた。そんなときに社長の澄川氏を勇気づけたのは全国から駆けつけ、泥だらけになりながら復旧活動を手伝ってくれた杜氏や酒屋の仲間たちだった。今、再建した酒造所の屋根には、「市民エネルギーやまぐち」が運営する太陽光パネルが張られる。同社は地域の有志が出資して設立した非営利の株式会社。利益や配当を目的にせず、発電した電気を売電して得た収益を出資者への配当金にあてる一方、同酒造所の復興資金として寄付にあてる。そして、そのお返しとして澄川氏からは「応援してもらった全国の皆さんに恩返しをするには酒造りしかない」と、丹精込めて仕込んだ吟醸酒を贈る。地域の自然エネルギーの普及に投資されたお金が、産業の復興、育成にも役立ち、Win-Winの関係を構築した事例だ。環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏は「今後は小さな造り酒屋や農家などで電気を作っていくことが、一般的になるかもしれない」と話す。

澄川酒造場が作った吟醸酒。愛好家からも味が良いと評判だ。

澄川酒造場が作った吟醸酒。愛好家からも味が良いと評判だ。

 

エネルギー兼業農家が地域、食を変える!

この日は「エネルギーと農の融合、新しい地域社会づくり」をテーマにトークセッションが行われ、食、農、エネルギー、地域づくりについて意見を交換した。慶応大学経済学部教授・金子勝氏は、「国内農業の大規模化が進められようとしているが、海外の農業大国と同じ土俵で競争をしても勝負にならない。日本の農業は安心・安全、環境に配慮した農産物を作ることができるなど有利な面もある。今後の農家は加工、流通販売まで手掛けて6次産業化し、さらにソーラーパネルを導入し、余った電気を売電する『エネルギー兼業農家』を目指すのも方向性のひとつ」。また、千葉商科大学人間社会学部教授・伊藤宏一氏は「江戸時代の日本は、各地域が豊かな文化を持つ輝く多面体だった。地域内で経済を動かす仕組みがあったが、1900年ごろから戦費にあてるため、郵便局を通して地域の金が中央に集められるようになり、戦後は企業に流す仕組みが出来あがった。市民出資により地域に金が流れる仕組みがあれば、再び地方が個性を持つ、輝く多面体の日本になるだろう」と語った。

 特産品、雇用を生み出し、地域の活性化に一役

「自然エネファンドへの投資は、皆でいいことに出資して、いい社会を作っていこうという仕組み。後押ししていこうというムードが金融機関にもある」と大和総研主席研究員・川口真理子氏が話すように、今後、普及が広がる見通しもある。「ファンドという言葉に縁遠さ感じる人は少なくないだろうが、近所の井戸端会議などで『あっちでこういう商品が発売されたけど、(投資するには)いい商品のようですよ』などといった会話が普通に交わされるようになれば、良いお金の流れができ、将来的に自然エネルギーの普及、地域の活性化につながる」(金子氏)。市民による再生可能エネルギー自給の取り組みは、地域の特産品、雇用を生み出し、地域の活性化に一役買っている。高齢化や過疎に悩む地域にとって、起爆剤になる可能性を秘めているといえそうだ。

廃棄プラスチックを油に変えるスゴワザ披露。海の清掃を行うため、トラックキャラバンが全国一周へと出発<ライフスタイル 地域に貢献するエコ活動> 

トラックの荷台が開かれると、そこに現われたのは実験室を思わせるなにやら不思議な装置。ガサっとペットボトルキャップが装置に放り込まれると、次はどうなるのかと、子どもだけでなく、大人たちも食い入るように覗き込む。昨年までアジアを中心に活動してきた環境NGOのエコパーティー(千葉県松戸市)が、「日本一周海岸美化発電」を掲げ海岸の清掃、環境保全の啓蒙活動を行うため全国へ出発した。

プラスチックを混合油に変える装置を積んだトラック。全国の海岸で清掃活動を実施する。

プラスチックを混合油に変える装置を積んだトラック。全国の海岸で清掃活動を実施する。

10キロのプラスチックが10リットルの混合油に

このトラックは全長8.6メートルの8トン車。アースデイ当日も来場者から集めたペットボトルのキャップを混合油にする実演を行った。トラックには油化装置が積まれ、こちらに投入したプラスチックを熱で溶かし、気化、冷却して混合油を生成する仕組みだ。PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)といったプラスチック10キログラムから約10リットルの混合油を作ることができる。さらに蒸留すればその燃料を使って発電することもでき、トラックを走らせることも可能という。

10キロのプラスチックを10リットルの混合油を生成することができる。

10キロのプラスチックを10リットルの混合油を生成できる。

 ネパールなどアジア各国で環境教育を実施

アジア各国では、近年のプラスチックの急増により、ペットボトルや河川に流出し、川の水を堰止めることで、大量の蚊が発生しマラリア感染への心配や、大洪水の際、レジ袋が排水溝に詰まって死者が出たり、川や海に流れ出したゴミを海鳥やクジラなどが飲み込んでしまうなど、生物の生存や生態系に悪影響を及ぼすことなどが大きな問題となっている。エコパーティーは2010年から2013年まで「スクールオイルキャラバン」と銘打ち、このトラックでネパールなどアジアの小学校を中心に、プラスチックごみをエネルギーに変えるデモンストレーションなど環境保全、環境学習を実施してきた。プラスチックごみを装置に投入し混合油となって抽出される一連の工程を見た、現地の人たちは『これはウソだ』と疑っていましたが、話を理解すると『日本の技術はすごい!』と目を輝かせていました」と事務局長の上井正則さんは話す。

「近くに来たときはぜひ、見にきてください」と事務局長の上井さん(右)。

「近くに来たときはぜひ、見にいらしてください」と事務局長の上井さん(右)。

海岸清掃&作った油で発電してライトアップイベント開催

今年は足元である国内に目を向けるとともに、海の食物連鎖の頂点であるクジラをはじめ、地球環境の未来、保全を図るため、海岸美化推進活動を実施することにしたもので、4月から12月までの8カ月間、海岸の清掃、環境保全の啓蒙活動を行うため全国を回る。「清掃終了後は作った油でライトアップイベントも行います。気軽に参加してください」と上井さん。12月31日、小笠原諸島(東京)でカウントダウンを実施して終了する予定。清掃活動のスケジュールは同NGOホームページ。各地の清掃活動の様子はホームページで紹介していく。エコパーティー 日本一周スケジュール

「被ばく牛は原発事故の生きた証」「誰かを捨てて、蹴飛ばして、今の平和や繁栄がある。それでいいのか、問い続けたい」 福島県浪江町・希望の牧場 吉沢さん

2011年3月に起きた福島第一原発事故で、福島県浪江町をはじめとする警戒区域内の農家が牧場の放棄と家畜の殺処分を余儀なくされた。そんな中で330頭の牛を救ったのが「希望の牧場(福島県双葉郡)」の吉沢正巳さん(60歳)だ。国の全頭殺処分指示に従わず、そして、苦渋の中で自分の家畜を置き去りにせざる得なかった地元の同業者からも反発を買った。何が牛を救出する行動へと駆り立てたのか。

希望の牧場内の放射線量は、3.4~8.1マイクロシーベルト/h(2013年9月時点)とかなり高い。

希望の牧場内の放射線量は、3.4~8.1マイクロシーベルト/h(2013年9月時点)とかなり高い。

 

警戒区域内の家畜のほとんどが餓死

福島原発事故前、警戒区域内では牛約3500頭、豚約3万頭、鶏約44万羽が飼育されていた。事故後、そのほとんどが畜舎で放置され、餓死した。同年3月11日、13日に起きた原発建屋の爆発、国から警戒区域設定、全頭殺処分の通告が出されるなど数々の障壁が立ちはだかる状況をかい潜り、吉沢さんは牛に水とエサを与え続けた。

希望の牧場は福島第一原発から約14キロの距離にあるが、除染が行われているのは道路から数メートルの範囲内だけで、ほとんどの場所が今も放射線量は高いままだ。事故から3年経った今、たくさんの牛が死んだが、仔牛も生まれ、今も事故前と変わらないほぼ同数の牛が、のんびり暮らしている。「牛の経済的な価値はゼロだということは分かっていたが、見殺しにはできなかった。被爆したという意味では貴重な存在。研究目的で生かす意義はあると思うので、今後も牛たちを生かす道を求めていきたい」と吉沢さんはいう。

スタンチョンという器具をつながれた牛はエサを与えられることなく餓死。崩れ落ちるように死んでいった。

スタンチョンという器具につながれた牛はエサを与えられることなく餓死。崩れ落ちるように死んでいった。

原子炉建屋爆発。これで終わりだと

2011年3月11日、東北大震災が起きたとき、吉沢さんは南相馬市のホームセンターで買い物をしていた。強い揺れにただならぬ事態が起きたということはすぐに分かったが、牧場が心配で戻ることにした。そこで見たのは、無残に潰れた牛舎、倉庫だった。電気が止まっていたのでディーゼル発電機を回し、牛たちに水を与えた。

3月12日、通信設備を設営するため、警察の通信部隊が10人ほどやってきた。そして、15時36分に原発建屋で水素爆発が起きる。警察官らは「本部から撤収命令が出たので、私たちは引き上げる。あなたもすぐに安全な場所に移動してください」と言い残して立ち去ったという。そして、14日にも2回の爆発音を聞く。吉沢さんは自衛隊のヘリコプターが、原子炉建屋に散水する様子を牧場から見ていた。「自衛隊は人々を守るため、きっと彼らはここで盾となって死ぬに違いない。その姿を見て自分もここから逃げるわけにはいかない」と気持ちが固まったという。この時、自衛隊が掲げていた「決死救命、団結」は、そのまま希望の牧場のスローガンになる。

エサを持ってくると牛たちは我先にと集まってくる。

エサを持ってくると牛たちは我先にと集まってくる。

牛を助けなければ。無我夢中で牧場へ戻る

その頃、浪江町では国、県から情報がない中で、独自に避難を判断。原発から北西に25キロのところに位置する津島に、約8000人の避難民が押し寄せ、ごったがえしていた。この後、避難民が逃げた方向に大量の放射能汚染が拡大していたことが明らかになる。スピーディ―の情報が国によって隠され、住民に知らされなかったのは後の報道の通りだ。

その後、吉沢さん自身もいったん二本松市へ避難したものの、再度、牧場に戻ることを決意。立ち入り制限区域で線量計を持った警察官から「通常の1000倍の放射線量となっているから入ってはいけない」との制止された時も、「牛に水を与えなければ、死んでしまう。自己責任で行く」と振り切った。

なぜ、高いリスクを承知で牧場に戻ろうと思ったのか。「ここで暮らしている牛は、経済的には価値がありません。牛の肥育を仕事にする私にとって意味があることなのかと考えました。それでも、割り切って、見捨てることはできなかった」。そして、「福島は国から見捨てられたのです。国はいざとなれば国民を捨てるのです」と言葉を続けた。

「被災地のことが風化しないよう、これからも訴え続けていく」と語る吉沢さん。

「被災地のことが風化しないよう、これからも訴え続けていく」と語る吉沢さん。

戦争中の棄民政策。福島に重なる

吉沢さんの国に対する不信感は、満州開拓団として中国に渡った父・正三さんの体験からくる。終戦間近、ソ連が日ソ中立条約を破って参戦するという情報を掴むと関東軍は退却。多くの日本人が「棄民」として置き去りにされ、60万人もの人がシベリアで抑留生活を送ることになった。その後、正三さんは無事に帰国を果たすも、国からの賠償はなく、住む家も食べるものもない困窮生活を強いられた。苦労の末、千葉で牧場を営む事業を始めた後、福島県浪江町に移り住んだ。その後を継いだ吉沢さんが2代目になる。かつて父が国から「棄民」として受けた扱いが、牛の置かれた状況、福島の人たちに重なるのだという。

「事故から3年が経過した今、被災地の人は今も故郷に戻れず、仮設住宅で生活しているのに、東京ではオリンピックが開催されると盛り上がっている。都知事は東京を世界一の街にすると言っているが、私には遠いところで起こっていることにしか思えない。オリンピックにネガティブな発言をしている人は非国民と言われそうな、そんなムードすらある」。

講演会は全国、呼ばれればどこにでも赴く。100回を超えた。

講演会は全国、呼ばれればどこにでも赴く。100回を超えた。

これからも脱原発、福島の窮状を訴えていく

「福島がこんな状況にもかかわらず、国は原発を再稼働しようとしている。ドイツは脱原発を決めたが、なぜ、日本で同じことができないのか。このまま2、3回、福島と同じことが起きなければ分からないのか。脱原発、福島の窮状を、都心や再稼働予定地の周辺などで訴えていきたい」。今後、全国を自分の軽トラックで街宣する予定だ。高い放射線量の中で3年にわたり、牧場で牛の世話を続ける。健康に影響はないのか。「事故後、20回ほど検査を受けたが、異常はなく心配ない」と意に介さない。東京・渋谷のスクランブル交差点をはじめ、各地の街頭に立って演説を行う。講演会は100回を超えた。

「福島で作られた電気は東京で消費される。それなのに私たちの故郷は東京を支えながら、無くなろうとしている。誰かの犠牲のもとで、一部の人が豊かさを享受する、それがまかり通る世の中はおかしい。米も野菜も作ることができず、多くの人が故郷に帰ることすらできない。仮設住宅に住む人の間でいさかいも起きる。争うべきは隣人ではなく、こんな状況を作った国であり、東京電力だ。特に東京に住む人が享受している今の豊かさを感じるもとになる電気は、福島で作られているということを、これからも訴え続けていきたい」と語る。これからも全国の街頭で、その想いを訴えていく決意だ。

東京・渋谷のスクランブル交差点で演説する吉沢さん。(撮影:木野村匡謙)

東京・渋谷のスクランブル交差点で演説する吉沢さん。(撮影:木野村匡謙)

■参考文献 原発一揆(針谷勉著 サイゾー)

東北随一の清流 山形県・最上小国川 慎重派退け、県はダム建設に向け足場着々

東北有数の清流・最上小国川(もがみおぐにがわ)。山形県とダム建設に慎重の姿勢をとる地元の小国川漁業協同組合(組合員1100人)との間で、ダム建設を巡って対立が続いている。反対派の先頭に立ってきた組合長が今年2月に自殺。県側は、漁協が求める「ダムによらない治水を検討してほしい」との要望を一蹴し、漁協が要望するダム建設に反対する有識者、専門家の協議への参加も拒否。県側が強引に押し切る形で、ダム建設推進に大勢が傾こうとしている。



推進派、慎重派が対立する中で、周辺工事が始まる

東北一の清流とも言われ、アユ釣りを目的に年間3万人もの客が訪れる最上川の支流・小国川。まだ山肌に残雪が残る現地を訪れた。ダム建設予定地に向かう道すがら車を降りて周囲を眺めると、山間に沿っていくつも小さな支流が注ぐ自然豊かな美しい渓谷が望める。

4月中旬にもかかわらず、ところどころに残雪が残り、東北の山里らしいぴりっとした肌寒さを感じる冷気、そして清らかな空気、川に近づくとさらさらと静かに流れる水の音がここち良い。しかし、山道を上るにつれ、ところどころに道路脇に建設重機が目に入るようになり、工事が始まっている様子がうかがわれる。12年に工事用道路、昨年暮れには排水路、ダムサイトにポールを打ち込む工事など周辺工事が始まり、まさに本体工事に着工したかの様相だ。

現場では周辺工事が着々と進み、本格的に工事が始まった様相だ。

現場では周辺工事が着々と進み、本格的に工事が始まったのでは…思わせる光景が広がる。

「環境に優しいダム」に異議続々

最上小国川に建設が計画されているダムは高さ41メートル、幅174メートルの穴あきダムで、総事業費70億円のうち半額を国が補助する。人の背丈ほどの穴が空いており、洪水時にのみ水量を絞ることができる構造のため、「川をせきとめず、環境に優しい」「河川改修に比べ安い」と謳う。

しかし、「環境に優しい穴あきダム」について、最新型の穴あきダムといわれる島根県の益田川ダム、石川県の辰巳ダムの視察を行った草島進一県議会議員は、自身のブログで「益田川ダムのある益田川は、工場廃液が流れ込む川で漁業権はない。また、辰巳ダムがある犀川は上流部に大型の犀川ダムがあり、すでに天然河川の様相もなかった。ダムのない、年1億3000万円もの鮎漁獲高を持つ天然河川に、穴あきダムが造られるのは小国川が初めてのこと」と述べている。

小国川漁協が危惧するのは、ダムのない清流・小国川のイメージを損なうことや遊魚者の減少だ。また、学識者や専門家らは、たまった泥が川下に流れることによる水質の濁りや、洪水により川底が洗われ、アユの産卵に好ましい状況が生まれるといったことなどから、ダムの存在はアユの生存にとって望ましくないという見解を示しており、ダム建設推進派、ダムによらない治水対策を求める慎重派の議論は平行線が続いている。

ダム建設の目的は20数件の温泉宿の治水対策

ダム建設の目的に掲げるのは、洪水時に河川氾濫により被害の恐れがある河川流域にある赤倉温泉の治水対策だ。小国川に沿ってしばらく車を走らせると赤倉温泉がある。「ふだんは水を流す穴開きダムの構造から見ても、このダムの目的は治水しかない。しかし、温泉街全体で20数軒の治水対策に巨費を投じダムを建設するのはいかがなものだろうか。特に危険性の高い川岸にある9軒はセットバックや1メートル40センチかさ上げするか川底を掘る、あるいは、防波堤を作るなどの対策をとれば、安全性を保てる上、費用的に安く済むと考える。しかし、県では『すでに結論は出ている』として、ダムによらない治水は議論の俎上にものぼらない」と関係者は言う。

治水対策が必要とされる赤倉温泉。歴史を感じさせる建物で、移転して再生しては…との案もあるが難航している。

治水対策が必要とされる赤倉温泉。歴史を感じさせる建物で、移転して再生しては…との案もあるが難航している。

ダム建設慎重派の漁協の組合長が自殺

小国川漁協の故・沼沢組合長は生前の昨年10月、「漁協はなにがなんでもダム反対ということではなく、ダムによらない治水もあるので、比較・検討することを県に提案してきた。しかし、県はこうした意見に聞く耳を持たず、まずダム建設ありきだった」と表情を曇らせた。

両者の攻防がヒートアップしたのは昨年暮れのこと。山形県は、県内内水面の漁業権を更新する許認可を担っているが、更新時期が迫った昨年暮れ、県が漁協に突きつけたのは、漁業権付与の条件に「公益上必要な行為への配慮」を新たに設け、「配慮する」という「担保」と引き換えに、漁業権を付与するというものだった。

前出の沼沢組合長は「担保とは具体的に何かと県に尋ねると、『それは自分で考えてください』という返答だった」と話し、途方に暮れている様子だった。「県側が示した公益性の配慮とは、ダム建設を妨げないという意思の表明。それがなければ漁協に免許を更新しないという脅しだった」とある関係者は言う。

漁業権の更新ができないことになれば、漁協に加盟する1100人の組合員が生活の糧を失うだけに、沼沢組合長は悩んでいたという。1月28日に1回目の協議が行われ、2回目となる2月10日、自らの命を絶った。

美しい清流・小国川を残そうとインターネット署名サイトChange.orgでは1万人の賛同者が署名した。

美しい清流・小国川を残そうとインターネット署名サイトChange.orgでは1万人の賛同者が署名した。

県 漁業権を楯に建設容認を迫る?

組合長を知る人は、「孫子の代まで小国川の自然を残したいというのが口癖だった。信念を貫く人で、組合員からの人望も厚かった。責任感が強い人だったので、自分がいなくなればどういう状況になるかは分かっていたはず。それだけに自殺は信じられない」と肩を落とす。

公益性の配慮という点について、「県は治水対策を目的にしたダム建設に公益性はあると言っているが、漁協が行ってきた漁場の管理、アユの稚魚放流など中間育成事業も公益性の高い仕事であるはず」との意見も続々上がり、「県のやり方はおかしい」と非難の声が上がっている。

前出・草島県議は、「今、漁協に対して行っているのは、ダム建設を迫る協議でしかない。昨年末に約束した協議はダムに依らない治水、ダム治水を併せてしっかり検討を行う調査であり、ダムありきの協議ではない。その協議にはダムに依らない科学者を同席させることを求めていきたい」と語る。

「引き続き、ダムに依らない治水対策を求めていきたい」と語る小国川漁業協同組合の青木理事。話を聞く草島県議。

「引き続き、ダムに依らない治水対策を求めていきたい」と語る小国川漁業協同組合の青木理事。話を聞く草島県議。

有識者、専門家のシンポジウム参加を県は改めて拒否

こうした中で、漁協はダム案、ダムによらない治水双方について専門家が討論するシンポジウムを県側に提案。記者会見で意見を問われた吉村山形県知事は4月14日、「これまで十分に議論されてきたことであり、交渉に振り出しに戻すことはできない」として、シンポジウムに有識者を参加させる提案を改めて拒否する姿勢を示した。

小国川に訪れる釣り客による経済効果は年間21億8000万円に及ぶという試算もあり、長期的見れば、ダム建設投資は新しい価値を生みださず、経済損失にもなる可能性があるとの指摘もある。

一人の尊い命が失われているのにもかかわらず、反省もなく協議を続行する県の姿勢を非難する声もある。5月中旬、沼沢組合長の追悼集会も行われる予定だ。ダム建設計画の発端から30年近くが経過し、地域の情勢、環境への考え方も大きく変化している。今一度、有識者を交えて議論することは地域の未来にとって無駄にはならないだろう。

脱原発は世界の流れ。再生可能エネルギー普及に政治がリーダーシップを発揮すべきとき

国内は原発再稼働か、脱原発かの議論で揺れている。福島の原発事故以降、国内で急速に高まった原発の議論だが、2011年当時、原発新設の計画を進めていたのは世界では中国、インド、イラン、そして日本など少数だった。今も原発を新設しようとしている国は新興国や発展途上国が中心だ。

アメリカですら1979年、レベル5のスリーマイル島原子力発電所事故以来、地域住民から反対の声が強く、原発新設には慎重だった。そして、1986年、旧ソ連でチェルノブイリ事故が起き、周辺諸国の原発に対する意識が大きく変わった。その中で、原発新設を進めようとしていた日本は例外的な存在であった。

ドイツは2002年、事故が起きたときのリスクが高いことに加え、放射性廃棄物を次世代に残すことへの解決策が見いだせない等の理由により、脱原発を決定。国内に17基あった原発を2022年までに全廃し、替わりに再生可能エネルギーの割合を35%まで高める計画だ。発送電分離が行われ、風力発電、バイオマス発電など電気を作る会社がいくつも生まれた。そして、人々は自分が使う電気を自分の意思で自由に買えるようになった。

一方、日本の電力会社には競争がなく、全国、広域のエリアに分け、各地域では事実上1社が独占してきた。当たり前のようにこの状況が続いていたが、福島の事故を契機に東京電力は国有化され、2015年からは国内でも発送電分離の改革が始まる見通しだ。

しかし、こうした中で朝日新聞は2月27日、原発再稼働に意欲を示す現職の経済再生担当相のパーティー券を、電力9社が覆面購入していることを報じた。法律に定められた範囲内と言え、現役閣僚、しかも電力行政に大きな影響力を持つ大臣に対し、電力会社、関係する個人が政治資金の源泉ともなるパーティー券を応分負担して購入することは、抜け道を利用し便宜を図っていると言われても仕方がない。

「特定団体に利益を誘導すること」。それが政治、官僚を動かすモチベーションとなっているのならば、真の意味で求められる発送電分離、再送可能エネルギーへのシフトは進まない。

世界では多くの国が再生可能エネルギーに力を入れ、新技術や廃炉ビジネスなど新しい産業が生まれ、雇用を生み出している。再生可能エネルギーを取り巻くビジネスは大きな可能性を秘めており、日本が存在感を発揮できる分野だ。日本に世界をリードするビジネスを育てるため、政治家は今こそ力を発揮すべきときだ。

「獲り尽くさない」オーストラリア先住民・アボリジニに学ぶ地球に優しい生き方

そもそも「地球に優しい生き方」とは今、世の中に蔓延する「競争至上。とにかく勝てばいい」「お金をたくさん持つことが豊かである」という価値感とは相入れないものなのだろう。

オーストラリア先住民のアボリジニは、同国人口の2.4%を占め、2006年時点で46万人ほどが暮らしている。かつて徹底した人種差別により、多くの命が犠牲になった民族でもある。1788年、イギリスによる植民地化以来、入職者によるハンティングなどによって殺害されたり、西洋から持ちこまれた病気、人種自体を消滅させることを目的にした政策により、50万~100万人以上いたアボリジニは、1920年には約7万人に減少した。そして、親と子どもを引き離し、子どもを街で学校に通わせ、白人のように生活することを強制したが、それが馴染むことはなかった。

西洋的価値のお仕着せであったわけだが、もともと狩猟生活をしていた彼らにそれが馴染まなかったことは想像に難くない。西洋人から見ると「勤労」「働く」という概念を持たない彼らは「怠け者」「下等な民族」と映ったようだ。

そんなアボリジニだが、「ドリームタイム」という物語がそれぞれの部族にあって、この物語を代々伝える文化がある。例えば、そのひとつに「祖先の精霊が荒れ地、つまりこの地上を旅してまわりながら、動植物をはじめ、月、空、星、太陽、水をつくり、それが終わると自分達も、動植物など地上にあるものになった」という物語がある。

アボリジニ一人ひとりには、ワラビーやカンガルーなどオーストラリアに住む身近な動物が、自らに宿る異なる神として決まっているのだという。大地を敬う精霊信仰であり、祖先の姿をトーテムにして敬う。アボリジニはこうした行為を通じて、地上のものと自分がどのようにつながっていることを理解するのだという。

そして、雑食性のアボリジニだが、自分の神だけは食べないのだそうだ。すべてのものを獲り尽くしてしまわないようにする知恵だとも言われる。

勝ち組・負け組という言葉に代表される弱肉強食を是とする論理、リーマンショックやヨーロッパの金融危機の発端となった金融の「強欲」がまかり通る世の中とどちらが文化的と言えるだろうか。「後世の子孫のことを考えて獲り尽くさない」。本当に地球に優しい生き方とは、アボリジニのような生き方であるということは、多くの人が感じるところであろう。

環境破壊は、社会の破滅につながる。地球環境問題を真剣に考えよう

地球環境問題が叫ばれて久しい。温暖化により各地で氷が溶け、将来、より頻繁化する異常気象、また、それに伴い、海洋諸国が水面に沈んだり、食糧危機が心配されている。また国内では、福島原発事故以来、今後、原発をどう考えるのか、エネルギー問題にも国民の関心が高まっている。

かつて日本も戦後の復興期を経て、電化製品の三種の神器と言われたテレビ、冷蔵庫、洗濯機は、サラリーマンの憧れだった。国民全体が「より豊かになろう」と活気に溢れた時代であり、それがお金を稼ぐことであり、幸せにつながるはずだった。しかし、現実はどうだろう?

国内では年間3万人もの自殺者がいる。そして、誰にもみとられることなく亡くなる老人の孤独死。その他にも、過労死、リストラ、貧困…便利な商品、欲しくなる魅力的な商品が次々に発売される一方で、毎日のように報道される社会の片隅で忘れ去られた人たち。これが、私たちが懸命に額に汗し、目指す豊かな社会と言えるのだろうか?

海外でも中国の経済発展は深刻な環境被害を引き起こしているように、インド、ブラジルなどの新興国もまた、さらに豊かさを求めるようになり、温暖化、エネルギー、食糧問題はさらに深刻さを増していくだろう。先進国が経済発展を求め、際限なく豊かさを追求する一方で、アマゾンなどでは森林伐採が進み急速に森が失われている。

数年前、国民の幸せを図る指標で、いわゆる経済の豊かさを示すGDPの上位ではないアジアの小国・ブータンが世界一という結果になった。大量生産、大量消費でまわす経済、モノを持てば幸せになる…その幻想は誤りだったことに気がつくべきではないだろうか。

今、世界で関心が持たれる地球環境問題。そして、誰にもとっても切り離すことができない「働くこと」 。この両者が相互に結びあうことで、「思いやりに溢れる優しい社会」「持続可能な社会」に近づくのではないだろうか。