忍び寄る温暖化 北極の変化、追い続ける
  冒険家・山崎哲秀さん


「氷が薄くなり、以前は通れていた場所も通れなくなりました」と、北極で20年にわたり調査活動を続ける、冒険家の山崎哲秀さんは言う。3年前も氷が割れ、そり、犬とも海に投げ出されたことがある。氷につかまり自力で陸に上がることができ助かった。

「最近100年間で世界の気温は0.74度上昇したが、北極は2倍以上の気温が上がった。100年後の北極の夏は、氷はすべて溶けて無くなっているだろう(WWF)」「北極の海にあるPerenal ice(永久的な氷)の範囲が14%縮小(2004年~2005年調査、NASA)」。地球上でもっとも「温暖化」や「人為汚染」など、環境変化の影響を受けやすいと言われる「北極」の環境が大きく変化している。

「暖かくなったせいで、以前は見られなかったクロクマも行動範囲を広げている」という。また、「氷が解けエサとなるアザラシがとれなくなり、ホッキョクグマが減少している」との報告がある一方、「以前に比べ目撃率が高くなっている」との情報もあるという。陸地が減ったことによるものなのか、保護政策で個体数が増えたのか原因は定かではないが、野生動物への影響も少なくないようだ。

山崎さんは北極で日本の公的な研究機関の依頼を受け、犬ぞりで観測地をまわり、温暖化の影響を調べるためのデータを収集するのが仕事だ。気温や気圧の測定、雲の形の観察、氷の厚さ、雪と氷のサンプリング等の調査を行なっている。もともと冒険を目的にこの地を訪れたが、犬ぞりの腕を買われ、今では調査が仕事になった。そして、現地でも少なくなった犬ぞりの名手でもある。





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極地エクスプローラー(Explorer)。1988年にアマゾン河イカダ下り単独行を経て、1989年からは北極圏(主にグリーンランド)遠征を繰り返し、グリーンランド北部イヌイット式の犬ぞり技術をマスター。第46次日本南極地域観測隊(越冬)を始め、北極圏での数々の観測調査遠征にも参加し、現在は犬ぞりによる「アバンナット北極圏環境調査プロジェクト」10年計画に取り組んでいる。1967年兵庫県生まれ。42歳。