これまで極地観測は公的資金のもと実施されてきたが、「民間の極地観測調査活動も必要な時代」と、2006年からは個人的に『北極圏環境調査プロジェクト』を立ち上げ、10年間かけて調査する活動も開始。北極圏活動の集大成と位置付ける。

第一次2006~2010年が北極圏沿岸域=グリーンランド~カナダ~アラスカ、その後、第二次として2012年に北極海域=北極点、さらに、第三次2015年に北極圏内陸域=グリーンランド氷床を調査する計画だ。

冒険家の故植村さんが犬ぞりで走破したグリーンランド縦断3000㌔㍍を、単独徒歩で挑戦しようと考えた山崎さんが、初めて北緯78度、世界最北の村・シオラパルク(デンマーク領グリーンランド)を訪れたのは、21歳(1989年)のときだった。

実際に訪れると「冒険」は厳しく制限されていて、実行できないことが分かる。諦めきれず、現地を歩くだけでもと、以来、毎年日本に帰ってアルバイトをして、日本と村を行き来する生活を続けた。

その間、先住民のイヌイットから犬の訓練の仕方、犬ぞりの操縦方法を教わった。しばらくして、北極に訪れる研究者たちの存在を知るようになる。より精密なデータを収集するには、小型飛行機による空からの調査ではなく、地上で調査を行う必要があり、山崎さんに白羽の矢が立ったのだ。これが仕事を始めるきっかけになった。

1995年、北極圏スバールバル諸島(スピッツベルゲン)北東島における北極圏氷河学術調査隊(JAGE95,日本、ノルウェー、ロシア合同)への参加を皮切りに、2004年11月~2006年3月にかけて、第46次日本南極地域観測隊にも参加した。以来、現在まで北極での調査を続ける。

「今の生活は充実していますが、もし、高校生の頃に『北極の研究』という仕事を知っていたら、研究員を目指していたかもしれません」と笑う。「北極の魅力はたくさんありますが、ひとつだけ挙げるとすれば、イヌイットの人たちの生命力が感じられることです。『生きることに真剣』な眼差し、眼光の鋭さを見て、私も生きていることを実感します」。そして「自分にしかできない仕事」と言い切る。

冒険をやろうと北極を訪れて20年。今、北極というフィールドが仕事の場となった。民間の調査隊の創設、イヌイット文化の継承、日本との文化交流など、まだまだやりたいことがたくさんある。







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