日本の電気代はスウェーデンの6倍

――問題点を教えてください。

「原発はCO2を出さないクリーンエネルギーだという意見があります。しかし、世界を見ると、欧米の先進国では過去10年、新たな原発施設の建設はゼロなのに対して、日本は増やしていく方向です。

そして、映画でも紹介している通り、原発は100%安全を保障できるものではないということです。スウェーデンでは、風力発電、バイオマスなど再生可能なエネルギーを利用するようシフトしました。消費者は電気を選ぶことができ、電気代は日本の約6分の1です。

原発は建設に莫大な費用がかかるだけでなく、保安や、維持費も必要です。その費用は電気料金に転嫁されることになり、消費者は高い料金を支払うことになります。将来的には、日本でも電気が自由に選べるようになれば、環境にも消費者にもメリットは大きいと思います。

そして、石油はいずれ無くなるということです。そこで、スウェーデンでは『脱原発』を国民投票で決めるとともに、2020年までに石油に依存しない社会を目指しています。

ひるがえって日本を見ますと今、日本の食糧自給率の低さが指摘されている通り、食糧の多くを海外からの輸入に依存しています。この食糧を生産するために、また、輸送してくるのに、莫大な石油が使われています。

食糧問題は、まさにエネルギー問題でもあり、日本も石油に依存しない社会づくりを進めていく必要があります。地熱など未利用の自然エネルギーもありますので、有効に活用していくべきでしょう。

祝島ではひじきを育てたり、漁をしたり、無農薬のビワを栽培して、1000年も前から人々の営みが続き、海には多様な生物が生息し、漁師にとっても最高の漁場です。

原発計画に対して、祝島の人たちは『NO!』と言い、自ら状況を変えていこうと立ち上がりました。自分には関係ないところで起こっていることと思うかもしれませんが、けっして無関係ではありません。祝島の人々の暮らしが持続可能であることが、日本もまた持続可能であるということなのですから。

普段、便利な生活の中で暮らしていると、自然の中で生きることや、コンクリートジャングルで暮らすことに頓着していませんが、自分たちの住んでいる世界は実はたいへんもろいものです。

スウェーデンはCO2を削減しながら、緩やかな経済成長を続け、質の高い福祉を実現しています。そこには、未来は自分達で選ぶことができること、自分たちが使うエネルギーは自分たちで選べるのだというヒントがありました。私たち一人ひとりがその意識を持てば、社会も変わっていくと思います」





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スウェーデンでは、石油に依存しない社会作りを進めている


祝島では、自然と共に暮らしてきた食、文化の伝統が危機にさらされいる。