既存の観光資源との相乗効果目指す


佐渡への観光客はピークだった1991年の年間120万人から60万人(2011年度)と半減した。それだけにトキの誕生には観光業界も大きな期待を寄せており、もともと佐渡にある既存の観光資源との相乗効果を目指している。

人気の観光地のひとつ「佐渡金山」。江戸時代初期に金山が発見されゴールドラッシュが起こり、金銀の採掘や商売を目的に集まり、一時期は10万人を超える人が暮らし隆盛を極めた。急増した人々の食糧をまかなうため、必要だったのが米の増産だった。そこで生まれたのが、山の斜面を開墾した棚田であり、水田に水をくみ上げるため使われた金山の坑内排水技術「水上輪(すいしょうりん)」などであった。

流罪となり佐渡に流された世阿弥が伝えたとも言われる、能は農村文化として今に引き継がれ、舞台数は全国の3分の1を占める。また、500年前に佐渡に伝わったとされる伝統芸能の鬼太鼓など、こうした佐渡の農業を育んだ歴史と文化、伝統芸能なども含めた「トキと共生する佐渡の里山」が、世界農業遺産に認定されたものだ。

一方、自然を楽しむエコツアーも人気を集めている。佐渡エコツーリズム協会では新潟大学でエコツーリズムを学んだガイドが登録(現在45名)し、エコツアーを紹介している。美しい植物群が見られる大佐渡トレッキングは、女性を中心に人気。トキと暮らしてきた里山の自然と歴史文化を知る「トキの里山ハイキング」など豊富なエコツアープランなどがある。

1960年代の高度経済成長の中、条件の悪い田んぼなどが減反によって荒れ、また、里山のコナラやアカマツも燃料として利用されなくなり、トキも絶滅するなど生態系のバランスも崩れた。ツアーではこうした環境破壊の現場を見たり、8~9時間かかる内海府ルートと外海府ルートのトレッキングや、林立する原生林を歩く「原生林と杉巨木群トレッキング」では人の手が入っていない森を観察出来るなど、本格的に佐渡の自然を知りたい人らの人気を集めている。

「佐渡には樹齢500年~1000年の巨木があったり、人数制限を行っている場所もあり、豊かな自然を楽しむことができます。今年はトキを起爆剤に観光客も増加の傾向があるので、エコツアーの人気も高まればと期待しています」と佐渡観光協会の齊藤浩二さんは話す。





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左上:佐渡名物たらい船
右上:年間通して行われる能の舞台(佐渡観光協会提供)
左下:当時の様子をリアルに再現する佐渡金山
右下:県外からも多くの人が来場したアースセレブレーション2012の一コマ