世界農業遺産に認定
トキ米人気


佐渡市が進めるのが「朱鷺(トキ)と暮らす郷づくり」。
2011年、
FAO(国連食糧農業機関)から、トキが棲める里山と生物多様性の保全を重視する取り組みが認められ、先進国としては世界で初めてジアス(GIAHS世界農業遺産)に認定された。

5年前始めたのが認証米制度。量販店、生協、米穀店などで販売され、人気を集めている。認証にあたっては、生きものを育む農法による栽培、減農薬・化学肥料(地域慣行比5割以上削減)による栽培など、厳しい基準が設けられている。「こうした米は高値で取引されているものの、たいへん人気が高く今年もすでに完売しました。今後は他の農産物のブランド化も進めていく予定です」と同推進室生物共生推進係の池田一男さんは話す。

消費者の人気も高く、高値で売れる認証米はいいことづくめのようだが、手掛ける農家数はここ4年間700件と横ばいを続けており、収穫量で見ると全体の2割弱に過ぎない。理由はコストがかかる点と、減農薬による農業が技術的、採算的にも厳しいためで、「トキを守りたい」「できる限り減農薬で米を作りたい」というこだわりを持つ農家の「志」に支えられているのが現状だ。認証米の普及は、トキのエサとなるドジョウや水生昆虫の安定供給につながるだけに、消費者の支持が今後、普及の鍵を握っている。

この他、佐渡市ではビオトープボランティアの募集や、宿泊プランの一部をトキ保護基金の寄付するエコツアー、トキが棲む森づくりの企業にスポンサーになってもらう「トキの森事業」などの取り組みも行っている。

佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションの首席自然保護官の長田啓さんは、「トキの保護は、単にひとつの種を守るという目的に留まりません。佐渡にトキがいることが佐渡の人の幸せにつながらないといけないし、ひとつの成功例が認証米制度であり、これからもこうした事例を作っていきたいと思います。そして、若い人に佐渡で働きたいと言ってもらえるようにしたい。環境保護、地域の再生の両立は過疎化の悩みを抱える全国の自治体にとってひとつの目指す方向性ですが、佐渡で出来なければ他で成功させることは難しいでしょう。私達の取り組みは、ひとつの地域がこれからどう進んでいくかの試金石であり、重い課題を背負っています」と話す。






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左上:佐渡のブランド米
右上:棚田(佐渡観光協会提供)
左下:佐渡トキ保護センター野生復帰ステーション
首席自然保護官の長田さん
右下:野生復帰ステーション内のモニターでトキを観察する様子