36年ぶりに自然下で
トキ2世が誕生

環境保護と地域再生に

取り組む新潟県・佐渡の挑戦

人と自然が共生する美しい島づくりを目指し、環境に配慮した地域づくりに取り組んでいる新潟県の佐渡市。36年ぶりに自然下でトキの誕生にという明るいニュースに地元は沸いている。佐渡が目指すのは、多様な生きものとの共生と地域活性化だ。 伝統と文化、自然を活かした観光産業や、コメを始めとした農産物のブランド化による産業振興など、環境を守りながら地域振興を目指す取り組みを追った。


絶滅から36年ぶり自然下でトキの誕生に
沸き返る地元


佐渡市は人とトキが暮らす島・生物多様性佐渡戦略を打ち出し、
2100年までの90年間、生物多様性の保全・利用を図り、自然と共生する地域づくりに取り組んでいる。全国各地で過疎化の問題が深刻化する中で、環境保護と地域活性化の両立に挑む取り組みが注目されている。佐渡市が次に目指すのは、自然下での60羽の定着だ。

かつて、全国各地に生息していたトキ。明治時代、美しい羽根をとるため狩猟や生息環境の悪化により数を減らし、最後に残った一羽が2003年に死亡し、日本産トキは絶滅した。同じく絶滅の危機に瀕していた中国で7羽が発見され、1999年、贈られたひとつのつがいからヒナが誕生して以来、現在、国内の個体数は260羽まで増えている(2012年8月現在)。現在、飼育されているトキは、佐渡では「トキの森公園」で一般公開され、見ることができる。

野生復帰への取り組みは、2007年からスタートし、2008年に
10羽、2009年に20羽のトキが放鳥されて以来、合計6回の放鳥が行われ、現在、67羽が野生下に放たれている。今年4月には、36年ぶりに自然下でトキのヒナが誕生し、現在まで、3組のペアから8羽のヒナが生まれたことが確認されている。

次に目指すのは3年後、島内に指定したトキ生息復帰ゾーンへの
60羽の定着。佐渡市ではトキのエサ場の整備拡大を図るため、今年度2360万円の予算を計上し、水田等をビオトープとして活用し、トキのエサとなるドジョウなどが増えるよう事業を行う集落やNPO等の団体に対して補助金を交付し活動をサポートしている。

「自然下におけるトキの生存率は70%。目標数を将来にわたって維持するためには100羽程度が必要だと考えています。当初は冬場のエサ不足が心配されていましたが、最近の研究で明らかになってきたのが夏場のエサ不足です。トキが一年と通して、ドジョウや水生昆虫を食べられるようビオトープを設置するなど、今後もトキが安定的に生活できる環境づくりに力を入れています」と佐渡市役所・農林水産課生物多様性推進室トキ政策係の村岡直さんは話す。



  

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左上写真:36年ぶりに野生下で誕生したトキ。
巣立ち直前の様子(環境省提供)

他:飼育ゲージ内のトキが観察できるトキの森公園