■冒険家を志したのは、高校生のときだったそうですね。

「通っていた高校は京都の進学校でした。周りの友人達が勉強するのを横目に、自分はやりたいこともなく、このままでいいのだろうかと漫然と日々を過ごしていました。そんなとき、冒険家・植村直己さんの著書を読んで、自分も同じチャレンジをしてみたいと思ったのです。

初めての冒険は、高校生のときで、東京から京都まで750㌔㍍の徒歩の旅。そして、高校卒業後は、工事現場のアルバイトで資金稼ぎ。南米のアマゾン川におけるイカダ下りに挑戦したのは、19歳のときでした。

アマゾン川5000キ㌔㍍の川下りを決行するも数日後、急流に巻き込まれイカダは転覆。流木にしがみついていたところ、運よく原住民の人たちに助けられ命拾いしましたが、お金、パスポートなどすべてを失い、やむなく断念することに。この失敗に懲りず、いったん日本に帰り、再び資金を貯め翌年、再挑戦し成功することができました。

今ならきっと躊躇する冒険でしたが、当時は若さゆえの怖いもの知らずで、勢いで実行したという感じでした。しかし、この冒険の成功は、今日の活動につながる自信になったと思います」

■常に危険と背中合わせだと思いますが、現地での仕事はどのように進めているのですか。

「毎年11月から3カ月かけて犬を訓練します。2月から5月は移動して調査の期間となります。GPSもありますが確認に使う程度で、主に太陽の位置を頼りに移動しています。

ホッキョクグマとの遭遇も毎日のようにあります。普通は犬がいると近寄ってこないのですが、お腹が空いている場合、近寄ってくることもあり、安全のためライフルを常備しています。空砲を撃つとたいてい逃げていきますが、それでも近寄ってくるものもいるので油断はできません。

太陽が出ないときもありますし、気温は零下45度になることもあります。一週間、吹雪が続くこともありますが、そういうときは寝袋にくるまり、ただ、天候が回復するのをひたすら待つのですが、こういうときでも臭いをかぎつけてクマが近寄ってきますので油断は禁物です。





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