2022年原発ゼロ、
2050年、自然エネルギー80%を
選択したドイツの今 

長く日本では電力会社の地域独占が行われてきた。発送電に必要な原価を見積もり、電力会社に利益が出るように計算する総括原価方式、老朽原発に依存する関西電力の経営問題、利益の9割を家庭に依存する利益構造など様々な問題が浮上している。

一方、ドイツ政府は「脱原発」の方針を決定し、2050年、自然エネルギー80%に向けて取り組みを進めている。脱原発、電力の自由化を進めるドイツの今、そして、何を進め、何が問題になっているのかを探る。




旧東ドイツ・グリースフィールド原子力発電所。湾に近い立地を活かし、
風力発電設備生産工場に生まれ変わらせる計画が進んでいる。

駐日ドイツ大使館・環境担当参事官
ドイツのエネルギー政策を語る


公益財団法人・自然エネルギー財団主催のメディア向けの講演会が2012年11月20日、東京港区で開催され、駐日ドイツ大使館・環境担当参事官のクリスティーネ・ワシレフ氏が、ドイツのエネルギー政策、原子炉の廃炉、核廃棄物処理について講演した。

2011年3月11日の福島原発の事故を契機として、ドイツのメルケル首相は脱原発に方針を転換。ドイツ国内では停止中だった8基の原子力発電所の再起動は原則行わず、また、残り9基の原子力発電所は2022年までの順次停止を決めた。

また、その他の12の原発もすでに運転停止、廃炉に進んでおり、現在、稼働しているのは、研究炉と教育炉各3基、研修炉1基のみだ。同時に2010年に17%だった再生可能エネルギーの割合を、2020年までに35%、2050年まで80%に引き上げる方針を打ち出し、ドイツの北部、中央、南部をつなぐ4500キロメートルの送電網の建設を進めている。


ドイツは廃炉、最終処分場のステージへ

ドイツ国内でこれまで研究施設や原発、再処理工場等の原子力関連企業、医療機関、民間企業から出され保管されている放射性廃棄物の累積量は、2010年末時点で9万6513平方メートル(甲子園の約7倍)。

使用済み燃料、および、放射性廃棄物の中間貯蔵には、既存原発サイトで使っていた中間貯蔵施設などを利用、また、最終処分場については2019年、鉄鉱石採掘場跡に作られた放射性廃棄物用最終処分場・コンラート最終処分場への搬入開始を目指している。

また、廃炉が決定された原発は完全撤去されるものもあれば、旧東ドイツにあったグリースフィールド原発のように湾に近い立地などを活かし、風車を製造する工場などへの転換を進めているものもある。

クリスティーネ・ワシレフ駐日ドイツ大使館・環境担当参事官は、今後について「2022年、全原発の停止を前提に、その代替となる再生可能エネルギーの確保、放射性廃棄物の処理、廃炉を一体として進めている。放射性廃棄物はすべて地下に埋設することになるが、中間処理施設、最終処分場建設には市民の反対もあり、引き続き、話し合いを進めていく」と語った。

また、費用・コスト負担については、「ドイツでは廃炉の費用は電気料金の中に含まれており、スケジュールに沿って廃炉に進める。また、今後、20年~30年で廃炉に関する技術やノウハウが蓄積されていくとともに、費用もコストダウンされていくだろう」と述べた。




 


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質問に応えるクリスティーネ・ワシレフ
駐日ドイツ大使館・環境担当参事官