新たに策定された

原子力災害対策指針 現実的でない

「原発ゼロの会」の国会議員、首長らから異論


超党派でつくる「原発ゼロの会」の国会議員、脱原発を目指す首長会議の首長らは2月21日、衆議院第一議員会館で国会エネルギー調査会を開催し、昨年10月、原子力規制庁が策定した原子力災害対策指針について意見交換を行った。同指針は原発事故時の避難基準や範囲、被ばく医療体制や、緊急時の体制整備のあり方等が含まれ、今後の原発立地や周辺自治体による地域防災計画の策定に大きく影響する。新指針を「原発再稼働判断の前段階に位置付けているのでは」との見方もあり、反原発を求めるサイドは神経をとがらせている。

原子力規制庁は今回、新たな取り組みとして一般から3000件のパブリックコメントを募り、新たに原子災害対策指針づくりを進めてきた。防災対策を重点的に充実すべき区域の目安(実用発電原子炉 半径5キロ、30キロ)、および、避難、退避に関する指標、安定ヨウ素剤予防服用など被ばく時の医療体制、放射線モニタリングやSPEEDIを総合的に活用して防護措置を実施することなどの方針をまとめた。

この指針をもとに今後、地方自治体は地域防災計画をまとめることになるが、参加した国会議員、首長からはパブリックコメントの取り組みを評価する一方、福島の事故を踏まえてシミュレーションを行ったのかといった指摘や、テロ対策の有無、また事故が起きた際、数十万人の人が計画通りに避難できるのかといったことなど、実行性を疑問視する声が相次いだ。

静岡県湖西市の三上元市長は、「福島では今も通常の20倍にあたる放射線が観測されている。もし、浜岡原発で事故が起きれば、当市であれば神戸あたりまで逃げなければいけないが、果たしてそれが現実的に可能か疑問と言わざるを得ない」。また、三重県伊勢市の鈴木健一市長は「計画を作るためには、自治体に原発の専門知識を持った人材が必要になる。また、高齢者が多くなっており、将来的にはますます高齢化が深刻していく。地域医療体制を含め、その方たちをどうケアしていくのが大きな課題であり、国の支援が不可欠だ」と話した。

また、河野太郎衆院議員は、壊れたまま2年近くが経過している福島の原発に触れ、「テロの危機管理やその対策、また、現場で工事にあたる関係者の調査なども、原子力災害対策の検討課題に含めるべき」と指摘した。

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脱原発を目指す首長会議の首長らからも厳しい意見
が相次いだ。写真は静岡県湖西市の三上元市長