大飯原発再稼働へ

経済優先、安全性無視でいいのか
立地原発に活断層の危険性も指摘


野田首相は6月8日、記者会見し「国民生活を守るため、再稼働すべきと判断した」とし、関西電力の大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させる方針を表明した。原発がフル稼働状態になるには6週間が必要とされ、7月上旬には3号機がフル稼働になる予定だ。

発表では「国民生活を守るため」との点が強調されたが、安全対策は不完全で電力確保を最優先した結果、なし崩しで再稼働が決定された拙速感が否めない。この発表を受け、東京・永田町の首相官邸前では再稼働に反対する約4000人もの人が集まり、抗議の声を上げた。

再稼働にあたって問題は多い。事故を起こした際の作業拠点になる免震重要棟などもなく、安全性をクリアしていないこと、そして、かねてから大飯原発内には断層が15あることから地震時の危険性が指摘されていることなどだ。

さらに、大飯原発の敷地内にある断層について、名古屋大の鈴木康弘教授(変形地質学)、東洋大の渡辺満久教授(同)が「活断層の可能性がある」とする分析結果をまとめたが、これに対して、関西電力は「活断層ではないと判断しており、再調査の必要はない」としている。

仮に大地震で地割れが起こり、原発施設がその中に深く落ち込むような事故が起きれば、福島原発事故を上回る甚大な被害となり、大阪など関西の広域エリアで人が住めなくなる事態もあり得る。

こうした国民の生命、安全対策よりも経済性を優先した判断であり、今後、政府が掲げる「脱原発依存」とは逆行し、順次、他の原発も再稼働に動いていく可能性がある。関西電力はこれまでも同様、一貫して原発再稼働の障害となるデータの発表を一切明らかにしていないが、その経営姿勢にも問題があると言わざるを得ない。

加えて、事故前となんら変わらず原子力ムラが主導しているのも大きな問題だ。安全の根拠となっているストレステストは原子力行政に深く関わってきた、身内である原子力安全・保安院が今年2月、押し切った形で検査の基準を作った経緯がある。

そして、同じく強い影響力を持つ、原子力委員会の構成メンバーも事故前と変わらず、同じ顔ぶれが居座り続けている。いわば、事故を起こした張本人が相変わらず、その中心を担っているのであり、責任をとることも反省もなく、「これで安全です」と基準を作り変えたに過ぎない。

今回の決定に対し、野田首相は「電力が足りないから再稼働」としているが、関西電力はそうではなく「安全が確認されてから再稼働」と言い続けてきた。その言葉には、暗に「順次、再稼働していく」というメッセージが込められている(植田 和弘京都大学教授)。

こうした判断のもととなる根幹が何も変わらない以上、今後も日本全国で原発再稼働が進められていくことになるだろう。こうした愚に、国民はNOをつきつけなければいけない。

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