政府、電力会社に高まる
脱原発の声

首相官邸前で2万人がデモ

ドイツの環境団体は、東電に「ブラック・プラネット賞」


7月1日の大飯原発再稼働を前に稼働に反対するデモが
6月29日、首相官邸前で行われ、警視庁によると過去最大規模となる2万人(主催者発表15万人)が参加し、「再稼働反対」の声を上げた。

複数の市民グループ有志でつくる「首都圏反原発連合」が3月ごろからツイッター、フェイスブックなどで呼びかけにより集まりはじめ、当初は数百人の規模だったが、先週末は1万人、今週末は2万人へ倍増。首相官邸前には警察車両が集まった人たちと官邸前を隔てるように並び、周辺道路は数百メートルにわたって身動きできないほどの人で溢れた。

このほか、関西(2200人)、名古屋、長崎、熊本などで市民が集まるなど、全国で原発再稼働に反対する声が高まっている。

日を追うごとには高まる反原発の声に対し、政府、電力会社の動きは一致しない。27日には東京電力をはじめとする9電力の株主総会が開かれ、7電力の株主が「脱原発」を提案したがすべて否決した。

この日、ドイツに本拠をおく環境団体・エコテンの代表6人が来日し、美しい地球を真っ黒に汚す者の意を込め、東京電力に対し「ブラック・プラネット賞」を授与した。(ちなみに昨年は、メキシコ湾で原油流出事故を起こしたイギリスのBP社が受賞)。

授与の理由についてエコテンは、「フクシマ事故は間違いなく人類史上最大の核事故となった。メディアや政治、資本が結託する資本主義の野蛮化は、人間軽視において一線を超えている。福島では数基の原子炉が爆発し、今なお制御不能で、放射能は地球全体に拡散している。にもかかわらず、この大惨事を引き起こした犯罪者たちは何の責任をとらないばかりか、何千ドルにも及ぶコストを一般の人々に押しつけようとしている。利益を最優先する東京電力のありかたを私たちの手で終わりにさせなければならない」とコメント。

来日した同団体の一人、ズィモン・パールさんは、「私たちは東電の株主だが、いろいろな理由をつけて株主総会への出席を拒んだ。最終的にはドイツのテレビ局が私たちの活動を取り上げたことで、出席できるようになったが、自分たちに都合の悪いことを排除する風土、裏表のある企業体質を改めるべきだ」と批判した。

また、野田首相は「エネルギーの構造を変革し、新しい成長につなげる」と語っているが、果たしてこの言葉にはどう意味が込められているのだろうか。大飯原発の再稼働など政府の一連の行動は、この言葉とちぐはぐに思われてならない。

29日、関係閣僚によるエネルギー・環境会議が開かれ、2030年の原発の割合を「0%」「15%」「20~25%」とし、8月末に今後のエネルギー政策をまとめる方針を示した。しかし、「15%」「20~25%」の選択肢は脱原発を明確に示すものではなく、脱原発を支持する識者らは「(原発ありきの)目標数値の設定そのものに意味がない」と主張してきた。

その意見を一蹴し、結論を急ぐ背景には、「原発を再稼働したい」という政府、電力会社、原子力ムラの思惑が透けて見える。巧妙な誘導を注意深く見守っていかなければならない。

HOME


デモでごったがえす首相官邸前 6月29日20時撮影


東電株主総会で抗議する環境団体・エコテンのメンバー
代々木体育館前 6月27日 10時撮影