自然エネルギー専門家会議 2011 自然エネルギーへのシフトが世界で加速

ジャパン、アジアスーパーグリッド構想掲げる

アジア18億人の貧困問題の改善にも期待




自然エネルギー財団(トーマス・コバリエル理事長)は9月12、13日、東京都江東区の日本科学未来館で自然エネルギー専門家会議 2011を開催し、飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)を始め、世界各国の研究者が出席し、今後の方向性や課題について話し合った。

冒頭、飯田氏は「3.11以降、世界で原発を見直す動きが加速し、再生可能エネルギーに対する関心が高まっている。設立イベントで当財団設立者の孫氏が明らかにした『ジャパン・アジアスーパーグリッド構想』を含め、日本の電力市場をいかに作っていくかが鍵になる。ち密な戦略を立てる必要がある」と語った。

また、アニル・ターウェイ氏(アジア開発銀行)は、「アジア・自然エネルギーの新しい飛躍」をテーマに講演。「自然エネルギーの普及には排熱、蓄電など技術的な課題があるが、民間にできることは限りがあり、政府のバックアップが欠かせない。一方、アジアでは1日2ドル未満で生活を余儀なくされている人が18億人おり、そのうち9億3000万人が1.25ドル未満という貧困の状態に置かれている。自然エネルギーはその改善にも大きな貢献を果たすだろう」と期待感を示した。

ハンス・ヨルゲン・コッへ 氏(デンマークエネルギー省)は「2006年、世界で石油の需要が供給を上回るピークオイルを過ぎ、デンマークでは石油に頼らないエネルギー政策に舵を切った。石油資源に限りがあることに加え、今後予想される石油、石炭などの価格上昇、原子力の不確実性、気候変動の対策から見ても、自然エネルギーにシフトするのは当然の流れだ。日本では、自然エネルギーが全エネルギーに占める割合は1%だが、2020年には30%、2035年には45%まで高めていく必要がある」と述べた。

トーマス・ヨハンソン 氏(ルンド大学)は「世界では30億人もの人が貧困生活を余儀なくされている。また、気候変動、地域の雇用創出、また再生可能なエネルギーシステムの構築など、化石燃料に依存から脱却する動きが加速しているが、これらの問題解決に自然エネルギーは大きな役割を果たしていくことになるだろう。原発は段階的に減らすべきで、バイオマスなどの再生可能エネルギー、スマートグリッド、また、自然エネルギー市場への投資促進、エネルギーを普及させるための補助金制度によって、一般の人へ関心を高めることが大切だ」と語った。

引き続き、政策、ビジネスケース、ファイナンス、技術とビジネスの未来、国際政策とパートナーシップ、革新的ビジネス・社会モデル、電力市場と規制、配送電網の統合など、テーマ毎に会議を行った。


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飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所・左上)
アニル・ターウェイ氏(アジア開発銀行・右上)
ハンス・ヨルゲン・コッへ 氏(デンマークエネルギー省・左下)
トーマス・ヨハンソン 氏(ルンド大学・右下)



自然エネルギー普及を目指し、孫氏が掲げた日本海に海底ケーブルを敷き、
全国に電力を供給するジャパンスーパーグリッド構想




天候に左右されやすい自然エネの欠点を補うため、将来はアジアを電力網で結び、
電力を融通し合うことも視野に入れたアジアスーパーグリッド構想