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地球環境問題

電気の自由化は名ばかり?原発費用は電気料金に上乗せで国民負担?<地球環境問題 原発の行方>

“原発特別扱い”

2016年から家庭向け電力が自由化され、消費者は自由に売り手を選べるようになり、電気料金の値下がりが期待されている。ところが、密かに再稼働、新設などを含め原発にかかる費用を電気料金に上乗せしようという計画が進められているという。

原発費用は国民負担

政府と電力会社が独占的に決めてきた電気料金は、2016年以降、自由化されることが決まっているが、密かに“原発の特別扱い”が進んでいるという。東京新聞は9月3日の社説で経済産業省の有識者の間で密かに交わされている話として紹介した。

自由化で電気の値下げが期待されているが、期待はずれに終わるかもしれない。

自由化で電気の値下げが期待されているが、期待はずれに終わるかもしれない。

その話とは電気の市場価格が基準価格を下回った場合、「原発の新規建設、廃炉、維持にかかわる費用を、全消費者の電気料金に差額分を上乗せする」というもの。従来通り、電気料金は政府と電力会社で決め、原発を動かす大手電力会社に損がないようにするという。つまり原発ありき、電気の自由化とは名ばかりということなのだ。

これまで「安い電源」とされてきた原発だが、ひとたび事故が起これば、巨額の賠償費用が必要になる。自由競争に耐えられないほどコストは高く、「独占事業の中でなければ原発事業が成り立たないことを、国も認めているということ」と記事は指摘する。

避難計画があっても避難できない

原子力規制委員会の安全審査を通った原発は「再稼働」を進めていくという方針のもと、その先陣を切って10日、九州電力川内(せんだい)原発が新規制基準に適合しているとの判断が出て、年末に再稼働する予定で進んでいる。その一方で原発事故に備え、国は自治体に避難計画を作るよう指示しているが、川内原発の周辺自治体では未完成という。安全審査には「避難計画」は含まれていないそうだが、国民の命はおかまいなし、というようにも見える。

パニックも想定される緊急時に計画通りにいくのか?

地方は幹線道路が限られている。パニックも想定される緊急時に計画通りにいくのか?

その一方、NHKが原発30キロ圏内の全国の自治体にアンケートをとったところ、半数以上の自治体が「避難計画の作成を終えた」と回答したというが、未完成という自治体も少なくない。

今年4月に青森県の原発の建設計画凍結を求めて提訴した対岸の北海道・函館市の市長がテレビのインタビューで「事故が起きれば、避難は難しい」と語っていた。また、全国自治体の首長で構成する「脱原発を目指す首長会議」でも避難計画の実効性を疑問視する声が上がっていた。

福島原発事故が起きたときも、道路が渋滞し、長い車の列ができた。限られた道路しかない地方では、何万人もの人の一斉避難は困難を極めるだろう。半数以上の自治体が作り終えたという避難計画の実効性はいかなるものなのだろうか。

必ず起きる自然災害

政府は原発を重要なベース電源として位置付け、原発再稼働、さらに新設も進めようとしている。その理由に挙げるのが、安定かつ安い電源とされること、そして、「CO2を出さず、化石燃料の依存も減らせる」という地球環境問題、温暖化の対策という点だ。

原発が安い電源ではないことは共通認識になりつつあるが、日本はプレートが複数入り込む世界的にも珍しい地形で、無数の活断層もある。東京では30年以内に70%以上の確立で大地震が起きると言われ、西日本では南海トラフ地震も心配されている。世界でも地震大国である日本。そんな危険性の高いところで、原発事故が起きれば取り返しがつかない事態になる可能性が高い。

そして、使用済み核燃料の処分方法も依然、見通しはつかない。今も福島原発周辺は放射能に汚染され立ち入ることができないことを考えれば、地球環境問題、温暖化対策という説明も苦しく、国民の理解も得にくいのではないか。

東京電力・福島第一原発の故吉田昌郎所長は事故4日目に「東日本壊滅を覚悟した瞬間があった」と語っていたという。何がなんでも原発再稼働するという姿勢は、福島の事故のことはすっかり忘れてしまっているかのようだ。

福島原発事故でスピーディーの情報がありながら、国民には知らされず、拡散する方向に多くの人が避難した。原発事故が起きたとき、福島以上の被害が出る可能性は十分ある。誰も責任をとらない無責任体制であるならば本当に怖いことだ。

 

デング熱、ゲリラ豪雨など頻発する環境異変。見えないウイルス、異常気象…予測不能な未来が迫る<地球環境問題 脅威として姿を現す温暖化>

デング熱、異常気象…温暖化の進行を危ぶむ声続々

国内で70年ぶりの感染者が確認されたデング熱。日を追うごとに、感染者は増え続けている。感染場所とされる東京・代々木公園は9月4日、駆除後もウイルスを持つ蚊が確認され、ついに開園以来、初めて立ち入り禁止にされる事態になった。一方、広島市北部では大規模な土石流が発生するなど、近年、以前は見られなかった感染症や自然災害が頻繁に起きるようになっている。相次ぐ感染症の増加や、異常気象などの“環境異変”は、温暖化、地球環境問題の影響との見方がある。

温暖化でウイルス、媒介生物の活動範囲が拡大

70年ぶりのウイルス出現、異常気象など近年相次ぐ“環境異変”。気象庁は8月の大雨について「記録的で異常気象といえるほど珍しい。温暖化の影響もある」との見解を示した。年を追うごとに自然災害は深刻化し、温暖化の影響は目に見える形で現われ始めている。

ヒトスジシマカの分布北限の移動(国立感染症研究所)

ヒトスジシマカの分布北限の移動(国立感染症研究所)

デング熱を媒介する蚊として一躍有名になったヒトスジシマカ。国立感染症研究所によると、1950年の分布の北限は栃木県で東北には生息していなかったが、2000年に山形県で、2010年には青森県でも確認されるようになった。

この他、世界でもエボラ出血熱などの感染症が広がりを見せている。デング熱は人から人への感染はないというが、感染症の広がりは大きな脅威になる。その原因は、ヒトやモノの移動が昔に比べ格段に増えたこと、また、アフリカや東南アジアで森林開発により、もともとウイルスを持っていた野生動物との接触の機会が増えたことなど諸説ある。

中でも脅威なのが、動物などを介して出現する強力な感染症だ。西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱は未だに収束に向かう気配はない。世界へ人が容易に移動できる今、ウイルスがまたたく間に世界に広がる可能性は高い。温暖化により、これまで日本には生息していなかった動物やウイルスの生息範囲が広がっていくことが考えられ、これまでなかった感染症が発生するリスクも高まっている。

スーパー台風、ゲリラ豪雨など異常気象も続発

一方、70人以上の犠牲者を出した広島県の大規模土石流は、短時間に降った大量の雨で地盤が緩んだことによるものだった。一気に濁流が樹木をなぎ倒し、家屋を飲み込み、車が水に浮かぶ光景は、改めて自然の破壊力のすさまじさを見せつけた。

スーパー台風は、世界各地で深刻な被害をもたらしている。

スーパー台風は、世界各地で深刻な被害をもたらしている。

2005年にアメリカで大きな被害をもたらしたハリケーン・カトリーナ以降、世界で甚大な被害をもたらす規模の台風「スーパー台風」が世界各地で甚大な被害をもたらしている。2013年11月、フィリピンを直撃し、1200人以上の死者が出た台風は最大風速が毎秒87.5mに達する「スーパー台風」だった。これは車も風で吹き飛ばす強さというから、もし国内であれば壊滅的な被害をもらすことは想像に難くない。こうした異常気象の原因も温暖化と見られている。

台風を動かすエネルギーは、海面から発生する水蒸気の量が影響する。そのため、水蒸気が豊富な熱帯地方が台風の発生場所になるが、温暖化で海表面の温度が上昇することで強い台風が生まれると言われる。地球環境問題に有効な対策を打たず、温暖化が進めば今後、さらに強い台風が生まれることが予想される。しかし、台風の数も増えるのかというとそうでもないらしい。「地球全体で台風をつくるのに使えるエネルギーが変わらないとすれば、強い台風が増え全体の数は減る」という識者もいる。台風の数は減り、さらに強さを増していくことが予想され、深刻な被害をもたらす土砂災害は今後も全国各地で起きることが心配される。

気温の上昇で農作物の転作も進む

温暖化は農作物にも深刻な問題。各地で転作の取り組みが進んでいる。

温暖化は農作物にも深刻な問題。各地で転作の取り組みが進んでいる。

温暖化の進行が深刻化する一方で、気温が高くなったことで、農作物の転作を進める農家が全国各地で増えている。

リンゴの生産が盛んな青森県では、これまで見られなかった病気が発生したり、高い温度の影響で日焼けや色づきの悪さなど、栽培環境が悪化している。こうした中でモモへの転作が進み、栽培面積は10年前と比較して、モモは1割ほど増え逆にリンゴは1割ほど減った。ミカンの産地・愛媛でもミカンから地中海原産のブラッドオレンジに転作する農家が増加。コメは将来の温暖化しても栽培できるよう、各地の気候条件に併せて品種改良を進めているという。

1997年、日本は温室効果ガス削減の数値目標を定めた京都議定書を採択したものの、2013年以降は離脱。一方、国際舞台でも先進国、発展途上国の対立は続き、温暖化に対して数値目標の設定などで合意は得られていない。温暖化、地球環境問題は日増しに深刻化し、目に見える形の脅威として私たちの目の前に姿を現わしている。

政府は土石流の対策として、全国の危険個所に土石流を堰止める効果があると言われる砂防ダムの建設計画を進めているというが、効果は限定的という見方もある。人類の生存に脅威になっている温暖化、地球環境問題に対して場当たり的な対策で良いのか、抜本的な対策がのぞまれる。

 

地球環境問題、社会問題を歌う異色のアイドルグループ・制服向上委員会。結成22年目。ライブ、ボランティアを中心に活動

脱原発・いじめなどテーマは様々。新曲は「金目でしょっ!」

脱原発、地球環境問題をはじめ、憲法9条、いじめ、歩行喫煙など社会問題をテーマにした曲を多く歌い、全国各地でボランティアやライブ活動をしている異色のアイドルグループ・制服向上委員会(アイドルジャパンレコード)。福島原発事故後の2011年9月には、CDシングル「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を発表し話題を集めた。

アイドルだから、言いにくいことも言える

現在、9代目のメンバーは10人で活動中。今秋、新しいメンバーも加わる予定。

現在、9代目のメンバーは10人で活動中。今秋、新しいメンバーも加わる予定。

制服向上委員会は1992年結成で、22年目という長寿アイドルグループ。現在の10名のメンバーは9代目。結成当時はCDが売れなくなり始めたころで、冬の時代でもあった。「10人の人から年間1万円をいただけるアイドルにしようという思いで始めました」とアイドルジャパンレコード代表の高橋廣行さんは言う。

ある脱原発イベントに参加した際には、数十人の機動隊に取り囲まれたこともあったという。悪いことをしたのかだろうと不安になる時もあるし、怖い思いもする。そして、大手スポンサーの支持を受けづらく商業的にマイナス面が多いにもかかわらず、難しいテーマの曲を歌い続けるのはなぜか。

「日本では珍しいと言われますが、イギリスなど海外ではアーティストがこうした曲を歌うのは一般的です。間違っていることに対しては、きちんと『おかしい』と言っていかなければならないけれど、言いにくいこともある。その点、アイドルは歌や踊りが下手でも、転んでも、間違っても許されますし、お客さんも寛容なんです。ファンの中には『原発賛成』という人もいるんですよ」と高橋さんは笑う。

「国内には現在、1000ほどのアイドルグループがあるとも言われますが、イベントによっては訪れるお客さんよりもアイドルの人数が多いこともある。2曲歌って握手して終わりで、誰も歌なんて聞いていないんです。また、ボランティアという場合でも普通は一度きりということが多いですね。でも、制服向上委員会の場合は同じ老人ホームや障害者施設に何度でも行きます。『また、来てくれたんだね』と喜ばれ、メンバーもやりがいを感じています」。

根強いファンは40代、50代の中高年男性

制服向上委員会のライブ。訪れた中高年のファンたちは大きな声援を送っていた。

制服向上委員会のライブ。訪れた中高年男性のファンたちは大きな声援を送っていた。

ライブがあるとのこと、訪れてみた。ふだん多くの人でにぎわう東京・上野だが、お盆休み最終の日曜ということもあって、制服向上委員会のライブが行われたこの日は街を行き交う人影もまばら。狭い路地を入った地下の小さなライブハウスは40代、50代以上と思われる中高年の男性たちでいっぱいだった。

ライブが始まると、ファンが曲の途中で入れる合いの手、野太い男性グループの掛け声が会場にとどろき盛り上がる。1970年代から1980年代にかけてアイドルブームが起きたが、その応援方法や掛け声は、当時を彷彿とさせる。

制服向上委員会が歌う曲は、地球環境問題やいじめなど社会問題を取り上げたものの他、恋愛をテーマにしたものも多い。一方で爽やかな歌やダンスのステージと、声援を送る中高年男性たちの間にある“不思議な間”。

聞くとかつてのアイドル全盛の時代から『アイドル好き』を自任する人、メンバーたちを自分の娘のようにように思っている人、有名なグループは手が届かない存在だけど身近に感じられるから…など、ライブに来る目的はそれぞれのようだ。人気グループでは、自分が好きなアイドルを応援するため、一人で何枚もCDを購入しその支出は一人数万円に及ぶ人も。それだけに、アイドル市場は経済力を持った中高年が市場を支えているとも言われる。

これからも地球環境問題、社会問題を訴え続けていく

「歌える場所があればどこへでも」がモットー。イベントやボランティアに積極的に参加している。

「歌える場所があればどこへでも」がモットー。イベントやボランティアに積極的に参加している。

この日のライブでは、新曲「金目でしょっ!」など3時間にわたって熱唱。「金目でしょっ!」は石原伸晃環境相の福島での発言をヒントに曲にしたもので、「日本全国、金目でしょ~♪」とユーモラスに今の日本、政治を皮肉る。近くYouTubeにアップする予定という。10月1日に発売される41枚目、結成22年記念アルバムとなる「ルールとマナーを守ろうよ!」にも収録される。

ライブの途中や終了時に設けられる写真タイムでは、お気に入りのアイドルと記念撮影ができる。写真に収まった男性たちが満面の笑みで、幸せそうな表情を浮かべていたのが印象的だった。

ライブが終わって、会場を出ればすぐに再び現実の世界に戻され、明日からは普段通りの毎日が始まる。街の喧騒の中で道すがら男性たちは、次にライブに参加する日が来るを楽しみに、明日からもまたがんばろうと思うのかもしれない。地球環境問題とアイドル、そしてファン。接点はないようであるのだった。(ライター 橋本滋)

 

 

青森・大間原発の炉心から300メートルの民家・あさこはうす 母の代から反原発貫いて30年<自然の大切さを次世代に伝える>

反原発、地球環境問題を訴え続ける

津軽海峡に面する青森県・下北半島の北端で、建設中の大間原子力発電所(大間原発)の炉心からわずか300メートルにある唯一の民家があさこはうす(青森県下北郡大間町)。過去には地権者があさこはうすを含めた建設予定地の買収を拒んだことで、大間原発は建設地を移動せざる得なくなったこともある。母の代から30年、用地買収に応じなかったのは、「自然を壊したくない、失いたくない」という反原発、地球環境問題への想いだ。

推進側からは「2年待てば、大間は動く」との声も

建設中の大間原発から30キロ圏内に含まれる北海道・函館市は今年4月、建設凍結を求めて提訴した。

建設中の大間原発から30キロ圏内に含まれる北海道・函館市は今年4月、建設凍結を求めて提訴した。(函館市ホームページより)

大間のマグロで知られる青森県の大間町は、人口6000人で漁業が主産業の小さな街だ。その一方で、国からの交付金で公共施設、病院などが建設され、流れ込んだ原発マネーは400億円以上とも言われ、住民の一割が原発関連の仕事に従事する原発城下町でもある。

原発の使用済み核燃料を再処理することでできるのが「プルトニウム」。本は4000発の核爆弾を製造できるだけのプルトニウムを備蓄するプルトニウム超大国とも言われる。大間原発は2008年5月、そのプルトニウムを再び原子炉で利用するプルサーマル計画の一部として着工。プルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を100%使う「フルMOX原発」である。MOX燃料は放射線量が高く毒性が強い上、敷地内、及び周辺には活断層の存在が指摘される大間原発は、“国内有数の危険度が高い原発”で、事故が起きたときの被害の大きさは福島原発事故の比ではないとも言われる。

福島第一原発の事故などを契機にいったん、中断されていたが前政権下で工事が再開。この決定に対し30キロ圏内に一部が含まれる対岸の北海道・函館市は猛反発し、今年4月、Jパワー(電源開発・東京都中央区)と国を相手取り、建設差し止めと、原子炉設置許可の無効確認を求める訴えを起こした。

1984年の大間原発建設決議以来、原発容認という空気が街全体を包む中、小笠原厚子さんの母・熊谷あさ子さんは、提示された巨額の用地買収にも首を縦に振ることなく2006年、68歳で逝去。大間原発阻止の遺志は、娘の小笠原厚子さんにより引き継がれている。

原発と地球環境問題の解決は相反

熊谷あさ子さんと小笠原さんが建設したログハウスの「あさこはうす」は、大間原発の炉心からわずか300メートルの位置にある唯一の民家だ。国道からあさこはうすまでの道路はJパワーから提供されており、フェンス、鉄条網で仕切られた道を15分ほど歩くと到着する。家主である小笠原さんの自宅は、北海道の北斗市にあるが、使用されていないと道路が閉鎖される可能性もあるため、定期的に訪れる必要があるという。

現在の状況について、「フェンスの内側に残土が積み上げられ、内部(原発施設)が見えにくくなってきている。また、原子炉メーカーが地元の人たちに『あと2年待てば原発は動くから待っていろ』と言っている声も伝わってくる。その一方で同窓会に登壇した同級生が皆の前で『(私のことを)応援している』と言ってくれた。公の場でこうした意見が出るのはこれまでにないことで、とても勇気づけられた」と小笠原さんは話す。

あさこはうすの電気は現在、太陽光設備と風力発電設備でまかなっている。「住めるようにするのが目標」で、アイガモ、鶏、犬などの動物が増えている他、以前から工事を進めていた台所も完成しつつある。小笠原さんはログハウスを続ける理由について、「自然、環境を守りながら子どもたちが安心して遊べる場所にしたい。そして、全国で脱原発に取り組む人たちともつながって想いをひとつにしていきたい。守りたい、失いたくないという気持ちで、これからもがんばっていく」と語る。

一方、水の確保、資金面など悩みは少なくない。水については、井戸を掘ろうと地元のボーリング会社に相談したが、一年以上もなしのつぶてという。街全体が原発容認の空気で包まれる中、何かひとつ事を前に進めるのも容易ではないようだ。また、生活用水については雨水を溜めたりしてしのぎ、飲料水は宅配便や郵便で送っている。「ここで生活をするとどれだけ水が必要なのか、ふだんどれだけ多くの物を捨てているかよく分かる」と言う。トイレも老朽化が進み、建て替えが必要になるなど資金面も悩みだ。

本人が知らない応援プロジェクトに困惑も

応援メッセージを送れ、寄付もできる「あさこはうすゆうびん」。

応援メッセージを送れ、寄付もできる「あさこはうすゆうびん」。

全国から寄せられる寄付は活動の大きな支えだ。「ただ寄付してもらうだけでは心苦しい」という気持ちと、あさこはうすに通じる道に人が通らないと封鎖される心配があるため、代わりに郵便局に行ってもらおうと始まった活動が「あさこはうすゆうびん」。葉書5枚が1000円で、「あさこはうすを応援しよう」というメッセージと寄付を送る目的を兼ねている。

小笠原さんは活動をより多くの人に知ってもらおうとの目的で各地で講演を行っているが、訪れる旅費も基本的に自費だ。講演に訪れた会場で手づくりのイカめしをはじめ、漁でとれた海産品を持参し、訪れた人に販売し資金にあてている。そこまでするのは、反原発と自然を守るという地球環境問題を多くの人に知ってもらいたいからだ。

一方で「あさこはうすの活動を応援しよう」と支援を名目にした寄付、便乗的な活動も悩みの種。実態が不透明だったり、許可を得ていなかったりするケースで、寄付や、応援プロジェクトなど本人の知らないところで立ち上がっているものも少なくないという。

そのひとつがネット上で展開される応援プロジェクト。いつの間にかあさこはうすゆうびんでなく、「普通の葉書を送ろう」にすり替わったホームページが立ち上がっていたという。「当方がその活動を把握しておらず驚きました」。また、「ある団体の募金活動を通じて(寄付金を)送りましたという連絡がきても、実際には届いていないことがありました。寄付してくれた方の気持ちが届いていないのなら申し訳ないです」とも。

あさこはうすの活動は、現在、小笠原さんとその娘さんが行っており、寄付の窓口も本人名義の口座のみで、それ以外の寄付、応援プロジェクトなどの名称がつくものには携わっていないという。これらの事例について残念としながらも「反原発や地球環境問題に対する想いは同じだと思う」と語り、複雑な心境をのぞかせた。

逆風の中で母の代から30年にわたり、原発阻止に孤独な戦いを続けてきた小笠原さんの活動は、各地で注目を集めている。小笠原さんは8月、神奈川県の川崎市で「お話し会」を開き、反原発や地球環境問題への想い、現状や課題などについて語った。この日、お話し会に訪れた人たちからも「井戸掘りに協力したい」といった申し出や、「事務局を作ってはどうか」といった意見が相次いだ。

「あさこはうす」は反原発、地球環境問題の象徴的な存在として賛同の声は広がっているが、個人活動の限界や課題も少なくなく、支援の広がりが期待される。しかし、応援するつもりであっても、方法によっては逆に迷惑になる可能性もある。支援の在り方については知恵が求められそうだ。(ライター 橋本滋)

 

地域で生まれる持続可能への取り組みの芽。気軽に、楽しみながらが長続きの秘訣<地球環境問題 コミュニティーからの挑戦(後編)>

個人でできる地球環境問題 取り組みの輪が広がる

毎年、行われるひかり祭りで使う電力はすべて再生可能エネルギーでまかなっている。(出展:「日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

毎年、行われるひかり祭り(藤野)で使う電力はすべて再生可能エネルギーでまかなっている。(出展:「日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

気候変動など山積する地球環境問題に、世界の国々は有効な解決策を打ち出せない。一方、原発問題や経済環境は厳しさを増し、貧富の格差も広がる。石油依存や、巨大な経済システムの中から抜け出すのは容易ではない。そんな状況の中でひとつの解決策を導き出す手法として、トランジション(移行・脱依存)の活動が注目されている

 

壮大なスケールの社会実験

トランジション・タウンは2005年、イギリスのトットネスという町で脱石油社会へ移行していくための草の根運動として始まった現代は大規模農業を目指す動きが主流だが、この対極として1970年代にパーマネント(permanent)とアグリカルチャー(agriculture)を組み合わせ、「永続する農業」という意味の造語「パーマカルチャー」が生まれた。トランジションは、この概念が基本となっている。

神奈川県・藤野は、パーマカルチャーや自然と暮らしに関わる市民活動も盛ん。

神奈川県・藤野は、パーマカルチャーや自然と暮らしをテーマにする市民活動も盛んだ。

元々パーマカルチャーや自然建築の教師をしていたトランジション・タウン創始者のロブ・ホプキンスさんは、気候変動、エネルギーなどの地球環境問題、厳しい経済環境など様々な困難な課題に対して、「パーマカルチャーやエネルギーを自給する試みの中にヒントが隠れているのではないか」と考えた。この発想を原点として「地域にある資源を生かし、その可能性を最大限引き出す」「足もとにある豊かさを認識する」「人とのつながりを大切しながら、楽しく生きる」「想像力を発揮し、とにかくやってみる」といった具体的な活動に広がっていった。

「トランジションは壮大なスケールの社会実験。うまく行くかは分からない。でも、確信しているのは、政府がやってくれるのを待っていたのでは間に合わないということ。個人として行動していては小さすぎる。しかし、コミュニティーとして行動すれば十分な規模で、しかも間に合うかもしれない」と前出のロブ・ホプキンスさんは語っている。(DVD In Transition2.0より)

食、エネルギーの自給など幅広い活動を展開

神奈川県の藤野で活動するトランジション藤野にもその考えが引き継がれ、ワーキンググループと呼ぶ数人単位のチームで活動している。持続可能な食と農の在り方を模索する「お百姓クラブ」は、食の自給自足、自然の循環を生かした農法、在来種・固定種の継承などに取り組んでいる。また、森に生かされてきた日本人の文化を再認識しようと活動を行っているのが「森部」。女性や子どもなども気軽に参加できる「皮むき間伐」などを中心に、山と人との接点を蘇らせる活動に取り組む。

再生可能エネルギー発電を希望する人向けにシステム組み立てのワークショップを開催(日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

再生可能エネルギー発電を希望する人向けにシステム組み立てのワークショップを開催(日本のトランジションタウン事例集」DVDより)

また、「藤野電力」は大企業に頼り切っていたエネルギーを自分たちで作ろうと、自然や里山の資源を見直し、自立分散型の自然エネルギーを進めている。再生可能エネルギーの発電システム組み立てワークショップを開催したり、藤野地域で発電設備などの施工にも取り組む。毎年、開催するひかり祭りでコンサートなどに使う電気は、すべて再生可能エネルギーでまかなっている。

藤野での生活には車が欠かせないが、「将来的には石油依存から脱却する」との考えから、電動アシスト自転車や電動スクーターも導入した。また、電気が充電できるようにと現在5カ所に再生可エネルギーで作った電気の充電ステーションを設置済みで、今後も増やしていく考えだ。この他、「内なるトランジション」をテーマに行き過ぎた消費主義、競争主義の背景にある不安やトラウマ、自分自身を見つめるなど心や内面へのアプローチや、「健康・医療」に取り組むワーキンググループもある。

取り組むテーマは様々。地域の魅力を発掘

現在、国内では50カ所のトランジションが活動しているが、その活動内容は様々なテーマに及ぶ。何をするか、こうしなければいないという決まりやルールはなく、各々のトランジションに委ねられている。その地域の特性に応じて、子育て、農業、マーケットなど取り組むテーマは様々。

藤野ひかり祭りには5000人が訪れる。年々、規模が大きくなってきている。

昨年のひかり祭りには5000人が訪れた。年々、規模が大きくなってきている。(撮影:梶間陽一)

「おいしいや嬉しい、楽しいといった活動であれば、人は集まりやすいですね。『お正月に餅を食べたい、それなら自分たちでもち米から作ってみよう』という話が出たので今年は、陸稲(おかぼ)の栽培に挑戦しています。また、メンバーは都内に勤めている人も多いが、藤野で働きたいという声もある。そこで、『こんなことで困っている』『こういう仕事ができる』という人を結ぶハローワークのような仕組みづくりも進めています。地域の声を聞くことで何が求められるのかが分かる。『できるかどうかは分からないが、とりあえずやってみる』というのがトランジションの基本的なスタンスです。そして、それが確実に地域力を上げ、きっと大きな問題も解決できるようになると考えています。こうなりたいという未来を描いて、創造力を働かすこと、楽しみながら活動していくことを大事にしています」とトランジション藤野の小山宮佳江さんは言う。

「個人では小さすぎるが、コミュニティーとして行動すれば十分な規模で、しかも間に合うかもしれない」という創始者ロブ・ホプキンスさんの想いは共感を集め、トランジションの活動は瞬く間に世界43カ国、1000を超える地域で行われる活動に拡大した。

人類は多くの自然を壊しながら、経済的な繁栄を築いてきたが、そこで失うものも大きいということに一部の人々は気づき始めた。トランジションの活動を行いながら、本来の自分を取り戻したり、人とのつながりの大切さに気づいた人がいる。そして、コミュニティーでの活動も少しずつ成果が出始めている。地域で自分たちができる範囲で地球環境問題に取り組む人々、行動しようという人々の輪は着実に広がろうとしている。(ライター 橋本滋)

世界で自然エネルギーへのシフトが進む。突出する中国、アメリカ、ドイツ…そして日本は?<地球環境問題 エネルギー編>

地球温暖化、地球環境問題への関心の高まりを背景として、世界で自然エネルギーが急速に拡大している。2013年末の自然エネルギーは世界の総発電量の増加量分のうち56%を占めるまでになり、世界全体のエネルギー消費量の約5分の1に達する見通しになった。一方で、自然エネルギーでリードする国々と日本が引き離されている現状が見えてきた。

世界の自然エネルギー導入量は過去最高水準に達した。

世界の自然エネルギー導入量は過去最高水準に達した。

 世界で自然エネルギー導入が急増

地球環境問題が世界の共通課題として認識される中、とりわけ再生可能エネルギーへの関心は高い。6月4日、米国・ニューヨークで行われた、すべての人のための持続可能エネルギー国連フォーラムで、国連ドイツ政府代表部は「2013年の世界の自然エネルギー発電量は記録的な水準へ急増した」と報告した。REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)がまとめた「自然エネルギー白書2014版」によると、世界の自然エネルギーの発電量は2012年から8.3%増加し、2013年末には1560GW(15億6000万kw)に達した。世界の総発電量のうち増加量分の56%にあたり、世界のエネルギー消費量の約5分の1に達する見通しだ。

自然エネルギー大幅増のけん引役を担ってきたのが新興国。地球環境問題に対する意識の高まりを背景に、普及の支援政策を採用する国が2005年の15カ国から、95カ国と6倍以上に急増。また、都市、州、地域レベルにおいて100%自然エネルギーで供給する体制へ転換する動きが広がる一方、ジブチ共和国、スコットランド、ツバルが2020年までに100%自然エネルギー源からの電力供給を目指している。

自然エネルギーのREN21のアルソロス・ゼルボス議長は、「議論の中心はもはや自然エネルギーがエネルギーサービスを担えるかどうかではなく、自然エネルギー100%を実現するために、導入ペースをどうすれば最大限加速できるのか、という点に変わっている。(実現には)現在の寄せ集めの政策や取り組みを継続させるだけでは不十分だ」と語った。

中国が突出。原発の発電量を上回る

自然エネルギーの内訳は、水力発電が1000GW(10億KW)で3分の1を占め、それ以外は太陽光、風力、バイオマスなどで560GW(5億6000万KW)。2013年の新規導入量は太陽光発電が38GW(3800万KW)で、風力発電の同35GW(3500万GW)を初めて抜いた。2012年、米国の風力発電市場の急速な市場の縮小を受け10GW(1000万KW)減少したものの、欧州などで洋上風力発電1.6GW(160万KW)が進み、記録的な年になった。

自然エネルギー累積の発電設備容量で上位なのは、中国、アメリカ、ブラジル、カナダ、ドイツ。中でも突出するのが中国で、自然エネルギーが爆発的な勢いで伸びており、2013年には原子力発電を上回った。世界全体の太陽光発電の新規導入量では、中国が3分の1を占め日本と米国がそれに続いた。風力発電でも長年、市場をけん引してきたドイツを中国、米国が追い越し、中でも中国はドイツの3倍になり、世界屈指の風力発電大国になった。温暖化、地球環境問題に消極的という印象がある中国、アメリカだが、すでに再生可能エネルギーの分野で日本より上位にいる。

ドイツの電気代が高い本当の理由

一方、日本は太陽光発電が大きく伸びたものの、人口当たりで見た太陽光の発電量はドイツに遠く及ばない。風力発電でスウェーデンと比較すると導入状況で3分の2程度に過ぎず、人口あたりで比べると20倍以上の開きがある。ドイツでは電力の取引料金は今後、劇的に低下する見通しで、風力発電では1KWHあたり4セントの国や地域も出てきているという。そこでよく耳にするのは、「ドイツの電気料金は年々、値上がりしている」という指摘だ。

ドイツの家庭用電気料金の推移(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

ドイツの家庭用電気料金の推移(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

ドイツの電気料金は2000年以降、右肩上がりで上昇しているが、それは自然エネルギーそのものが高いということではない。ドイツの電気代を高額にしているのは、再生可能エネルギーの買取負担だけでなく、付加価値税、自治体税、付加価値税などの税金が加わっているためだ。電気代を比較するとドイツの1KWHあたり30円(2011年)に対し、東京電力26.7円(2012年8月)となりドイツの方が高いように見えるが、税抜きで見るとドイツ20.6円、東京電力25.1円となり逆転する。

風力発電においては、現在では日本の電気代はドイツなど比べ、約3倍(太陽光発電の場合ドイツ、風力の場合スウェーデンとの比較)。しかも、核廃棄物の処理負担、損害保険の価格は反映されていないため、今後、日本の電気代は上昇していく可能性が高い。固定価格買取制度(FIT)により再生可能エネルギーを高値で買い取るようになり、住宅用太陽光の発電コストも直近2年で33.4円~38.3円から29.8円と下がる傾向にあるものの、日本の再生エネルギーは国際的に見て高くコスト削減が課題だ。

家庭用電気代の日独比較(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

家庭用電気代の日独比較(出展:富士通総研梶山恵司氏のレポートより)

日本は自然エネルギーを活かせば資源大国になれる

地球環境問題への配慮、自然エネルギーの価格下落もあって、自然エネルギーへのシフトが世界的に進んでいる。また、2022年までに原発廃止を決めたドイツをはじめ、米国では2013年、5基の原発が運転停止、9基の新規原発の建設計画が中止になるなど脱原発が進む。

日本はというと、政府はエネルギー基本計画で自然エネルギーの数字目標を設定せず、順次原発再稼働を進める方針だが、世界を見れば原発推進の立場をとる少数派だ。電力会社が連携可能量という上限を設け受入れを制限していることが、国内の自然エネルギーの普及が進まない一因となっており、電力系統への接続の改善をはじめ、自然エネルギーの目標数値設定、規制の撤廃、電力価格の引き下げなど課題は多い。

再生可能エネルギーの普及は、地球環境問題にも有効

元スウェーデンのエネルギー庁長官で自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長は、「これまで日本は資源がないと化石燃料や原発に頼ってきたが、地域エネルギー資源を有効利用すれば、資源豊かな国になれる。これまでEU諸国が経験した数々の失敗から学べるのも日本にとって有利な点」と話す。ドイツの取り組みや自然エネルギーについて「天候に左右されるので不安定」といった指摘もあるが、EUでは相互に電力を融通し合う仕組みがあって電力の供給状況がチェックされるとともに、電力が供給できなかったときの取り決めも供給者とユーザーの間できちんと決まっており、問題なく機能しているという。また、ドイツでは高い電気代を避け、隣国に企業が移っているとの指摘があることについて、同氏は「自然エネルギー導入の初期段階にそうした事例もあったが、最近は聞かない」と語る。

温暖化や地球環境問題においても有効な再生可能エネルギーへのシフトは世界の潮流でもある再生エネルギーで遅れをとっている日本だが、2016年から電気の小売が全面自由化される。コストダウンには発電量の増加が不可欠であり、再生可能エネルギーが普及しやすい環境の整備が期待される。